「コモディティ市場で過当競争を続けている業界にある企業はどうすれば生き延びることができ、しかも高収益の体質に転換できるのだろうか。」
この課題に対する戦略的な対応のひとつとして、同じ事業領域のなかで熾烈な過当競争を繰り広げている企業群が、徹底したコスト削減を目的に合従連携することを前回示した。今回は情報システム領域での企業間プラットフォームについて考える予定であったが、少し寄り道をして、コスト削減を目的に合従連衡したその具体的事例を見ておこう。中京地方を基盤とするユニーと近畿地方を基盤とするイズミヤと中国・四国地方を基盤とするフジのGMS3社の商品仕入れに関わる連携がそれだ。
2008年にユニーとイズミヤとが共同仕入れを中心とする業務提携契約を締結し、ユニーのPB商品「e-price」の一部商品をイズミヤでも取り扱うようになった。さらに2009年3月これにフジが加わり共同でブランド名を「スタイルワン」とするプライベート・ブランド商品を開発することを目指して戦略的な提携を実現した。
共同開発は順調に進行し、2009年8月「スタイルワン」ブランド名による食品90品目・日用品10品目の発売を3社同時に開始するまでに至った。「スタイルワン」ブランドの商品は上記3社の直営・系列店舗の他、ユニー系のコンビニエンスストア「サークルKサンクス」の一部店舗でも取り扱われている。この共同開発によって、イオンの「トップ・バリュー」、セブン・アイグループの「セブン・プレミアム」への対抗軸が形成されることになった。
こうした共同仕入れの業務提携の形は1969年のジャスコの取り組みにさかのぼることができる。当時まだローカルスーパーマーケットチェーンの域を出なかった岡田屋(三重県四日市市)、フタギ(兵庫県姫路市)、シロ(大阪府吹田市)の三社が、地域スーパーの域を脱して、ナショナルチェーンのダイエーやイトーヨーカドーに伍して戦うことを目指して選択した戦略が、共同仕入れに向けた戦略的連携であった。三社は共同出資で共同仕入会社の「ジャスコ株式会社」を設立した。社名の「JUSCO」がJapan United Stores COmpanyの頭文字から名付けられたように、まさしく共同店舗を意図したものであった。翌年1970年にはこの業務提携を基盤に合併し、ジャスコは以後これを契機に急成長の波に乗ることになった。
ジャスコの試みは合併を前提としたものであって、その点では合併を現時点では視野に入れずに、独立独歩の路線を三社それぞれが歩むことを意図している、ユニー、イズミヤ、フジの三社提携はまったく異なる戦略であるといえる。しかも三社は協働のための組織を独立しては設けていない。ジャスコが採用したような共同出資の開発会社を設立するようなことは行わず、三社がそれぞれ手弁当で開発に参加するという形で成果を出している。共同出資で会社を作ればそれだけまた新たに会社運営のための費用が固定化されてしまうことを避ける強烈な意志の顕れだ。合従連衡によって徹底したコストダウンを志向するという戦略が形として表現されているといえる。
ところで中小スーパーの協業組織としてCGCグループがある。加盟企業数は224社、その店舗数は3,681社、加盟企業の総売上高は4兆2,658億円にも達する規模を誇る協業組織である。この総売上高のうち本部の取扱い高は約7,400億円、約17%に達している。CGCグループについて同社のホームページには次のような紹介がある。
「昭和48年、原油価格が高騰し、トイレットペーパーや洗剤など石油関連商品が店頭からなくなり、わずかな商品を求めてお客様が殺到するパニックが起きました。その時、「お客様に良い商品をより安く、安定的に提供できるパワーを持つためには、全国規模でまとまることが必要」と考えた各地の中堅・中小スーパーマーケットが東京・新宿にある株式会社三徳の呼びかけに応じて結集したのが、CGCグループです。その本部機能を担っているのが、シジシージャパンです。1社ではできないこと、みんなで一緒になって取り組んだ方がより地域のお客様に貢献ができること、例えば、商品の開発や調達、物流、情報システム、販売促進、教育などにCGCグループは取り組んでおり、私たちはそれを協業と呼んでいます。」
まさに中小スーパーの全国的な合従連衡である。加盟企業は単純平均で190億円の売上高に過ぎない中堅地域スーパーが、PBの開発・調達、情報システム、物流、販促、社員教育などの領域で、4兆円規模のプラットフォームを構築し、これを共有し、活用することが可能になっているわけだ。
こうした協業活動での思わぬ陥穽は本部組織の肥大化である。協業組織の目指すところは徹底したコスト削減に置かれるべきであるが、ややもすると本部が自己目的的に行動をすることで、グループ全体のコストダウン目的から逸脱しかねない。CGCグループの場合はどうであろうか。本部の従業員数は334人である。仮に一人当たりの人件費を年間4百万円とすると、14億円の人件費総額になる。これを本部の取引額7,400億円で割ると約0.2%に相当する。0.2%の人件費を投入して本部が赤字にならず、また加盟企業がコストダウンの成果を仮に0.2%享受するためには、グループ全体で仕入れコストを0.4%は削減しなければならない。もちろん本部の経費は人件費だけではない、提供するサービスに付帯する経費すべてを賄わなければならないということだ。
かくしてコストダウンを目的に企業間の合従連衡を目指すには、協業に由来する新たなコストの肥大化を防止する仕掛けが準備されなければならない。
ここでようやく情報システム領域での企業間プラットフォーム化について考える時が来た。(続く)
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