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経営視点による情報活用戦略

経営視点による情報活用戦略(その10)

 

 「コモディティ市場で過当競争を続けている業界にある企業はどうすれば生き延びることができ、しかも高収益の体質に転換できるのだろうか。」

 

この課題に対する戦略的な対応として外部資源の活用を考えている。その具体的な事例として、同じ事業領域のなかで熾烈な過当競争を繰り広げている企業群が、徹底したコスト削減を目的に、外部化した情報システムという内部資源を共有する形で合従連携するということがテーマとして浮かび上がった。

 

その具体的な形としてERPを導入している企業に着目してみた。ERPを導入した企業は、相互に熾烈な競争をしていても、その基幹業務システムはほぼ同様の手順で動くことになる。こうなると競争しあう企業の基幹業務システムは共通化されることになるので、それぞれが独自に装備し、運用することの無駄が見えてくる。ではERPを導入している企業間で基幹業務システムを外部化して、共通化しこれを企業間で共有することはどのような形で可能になるだろうか。

 

ERPを活用する企業間の連携を考えるとき、前提として同業に属する企業間の合従連衡が考えやすい。なぜなら同業であるがゆえに業務内容がほぼ同一であると考えられるからだ。同業であることは競争上、機密保持の観点から合従連携はできるだけ避けたいという思考に陥りがちではある。しかし実はそれを乗り越えることで大きなコスト削減の成果を刈り取ることができる。ここでもリスクを果敢にとりに行かなければ、ハイリターンはないという原理が貫徹している。

 

ERP導入企業間の連携の在り方を追求してみよう。まずはハードの共有化が考えられる。ERPが稼働するサーバーの共有だ。ERP用のサーバーの規模は巨大だ。しかもデータの増殖スピードも速いので、データベースの容量の管理が困難になる。こうした困難を解決してコストダウンンを図るために、クラウドコンピューティングを活用して、ERPのサーバーを複数企業で共有する方向が考えられる。共有化した企業はサーバーの監視やデータベースの管理という煩わしい業務から解放され、同時にサーバーの利用コストの削減がもたらされる。

 

ところでERPを運用するためにはいくつかのサーバーを使う。本番機、バックアップ機、テスト機、開発機などだ。本番機やバックアップ機から攻めるのが困難なら、まずはテスト機や開発機から始めてはどうだろうか。

 

サーバーの共有から次に進むべきはアプリケーションそのものの共有化だ。この段階ではERPそのものを共有化して、複数の企業で活用するという形が志向されるべきだ(注参照)。このための前提は次のようになる。

 

1.アドオンがないこと。仮にどうしても必要なら業界共有のテンプレートとして、ERPベンダーに開発を要請することに挑戦すべきだ。開発が不可能という場合に限って業界共通アドオンを認めることにすべきだろう。

 

2.アプリケーションは共通化するが、データベースは個別企業に固有の位置づけとすること。データはセキュリティー・システムで防御されなくてはならない。

 

3.クラウドコンピューティングを活用すること。クラウド化することでユーザー企業はERPの運用に関わるすべての業務から解放される。もちろんデータベースの拡縮は自動的に行われることになる。利用に伴う課金は従量制となり、ユーザー企業は現状比で30%を越える大幅なコストダウンを享受できるだろう。

 

4.共有ERPのセットアップやこれに伴う開発は、クラウドコンピューティングベンダーが自前で行う。開発費はユーザーへの利用に伴う課金として回収される。

 

こうしたERPの共有化はどのような手順で可能になるだろうか。まずは複数の、しかもできるだけ多数の有志企業がコンソーシアムを立ち上げることから始まる。コンソーシアムは各企業からメンバーを出して構成され、メンバーは手弁当で活動に参加する。コンソーシアムはクラウドコンピューティングのベンダーを選定し、ベンダーとともに開発していく。

 

あるいは業界の中での先駆者が独自に自らのERPシステムをクラウド化することから始めて、その仕組みを順次他企業に開放していく形もある。7月23日の日経新聞朝刊に住友生命がクラウドコンピューティングを活用して大幅なコスト削減をするという報道がなされていた。この動きはまさに先駆者的な動きのひとつである。

 

「住友生命保険は大手金融機関としては初めて、ネットワーク経由でシステムやソフトウエアを利用する『クラウドコンピューティングの本格導入を始める。まず来年9月をメドに、業務の中核である資産運用の分野に使用する。これによりシステムの開発・保守費用を4割削減できる見通し。」

 

住友生命は20兆円にも及ぶ資産運用を実施している。資産運用部門の業務収入は8,400億円で全社の収入の約20%に及ぶ。住友生命はこうした中核の業務システムをクラウド化する計画を持ち、住友生命の情報子会社のスミセイ情報システムとNECが協働してこのシステムの開発と運用を行い、軌道に乗った時点でこのシステムを地銀や信金に販売する。このシステムの活用によって、住友生命は資産運用に関わる情報システムコストを40%削減可能とみている。

 

住友生命の事例はERPシステムそのものの共有化ではないが、開発されたシステムは、他社がそのまま利用できるという意味で、結果的にERPの開発をクラウドコンピューティングを前提に行ったとみてもいいだろう。世の中はすでにここまで来ている。ERP導入企業が連携して業務システムを共有することが普通になる日は近い。

 

(注)ISID社(電通国際情報サービス社)が、すでにSAPを使ったクラウドサービスを発表している。

http://www.sap.com/japan/press.epx?pressid=12217

またNEC社も自社導入したものをクラウドサービスで提供する動きがあるようだ。

 

■     twitter:http://twitter.com/gyzmomzyg

■     中田康雄事務所:nakatayasuo.office@gmail.com

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