「コモディティ市場で過当競争を続けている業界にある企業はどうすれば生き延びることができ、しかも高収益の体質に転換できるのだろうか」
通商産業省が2月に発表した「日本の産業を巡る現状と課題」(http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100225a06j.pdf)に示された日本企業の現状報告は改めて日本企業のおかれた深刻な状況を浮き彫りにしている。第1図は利益率の比較である。
いずれの業種においても日系企業の利益率は海外企業に比べて1/2以下である。この報告では、低い利益率は日本国内における企業数の過剰が要因の一つであると推論している。その傍証として日本と韓国の業界別の企業規模の比較が掲載されている。(第1表)
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これを見ると韓国企業は、一つの業種に1社ないし2社が存在するのに対して、日本では少ない業界でも4社、多い業界では10社もの企業がひしめいている。韓国ではもともと業界の市場規模が小さいからと考えられがちだが、1社当たりの市場規模を比較するとそうした反論はあたらないことがわかる。
日本ではグローバルに見て規模の小さい企業が国内市場を巡って厳しい競争を繰り広げ、激しい消耗戦に陥って、体力を消耗している実態が浮かび上がる。韓国企業は業界内の1社当たりの市場規模は日本より大きな企業が多いが、にもかかわらずなおかつ自国市場の規模の限界を乗り越えるために、いち早く海外に展開して、アジア市場での優越的な位置を占めるにまで至っている。この点でも日本企業の海外展開のスピードは完全に韓国企業に後れを取っている。
日本企業の劣勢の原因の一つに企業ガバナンスの脆弱性がある。株主からの企業経営者に対する厳しい監督がなされていないということだ。ありていに言えば企業価値の毀損が長期的にわたったり、将来的な成長戦略の見通しについての明晰な説明責任がなされない場合に、株主は経営者に対して交代を宣告するということだ。
企業ガバナンスというとコンプライアンスやら内部統制などの守りのリスク管理が喧伝されるが、本当は経営者の暴走や、経営者の自己保身的な行動による企業価値の毀損を、当該経営者を排除することで実現することを意味する。
日本企業の経営者の行動原理は原理的に自己保身的である。終身雇用の雇用慣行の中で、経営者は生え抜きの人材のいわば双六のあがり的なポジションになっていて、任期中はハイリスクハイリターンを避けて通りがちになる。後継候補者たちもそのポジションに到達するためになるべくトップの足は引っ張らない行動に終始する。こうした自己保身的な行動による企業価値の長期的な低落にたいする対抗力として企業ガバナンスが機能することが期待されるわけである。
しかし日本の企業ではこのガバナンスが有効でない。経営者失格の企業でも株主が排除することはめったに起こらない。内部の自浄作用も起きない。その要因は4点ほど考えられる。
1.企業間の株式の持ち合いがいまだに行われていて、しかも相互に利害を共通にする企業間の持ち合いが多いので、投資先の経営者に対する監督機能は果たされない。
2.個人株主の構成比が著しく低いので、一般株主の利害を擁護する意思が力を持ちにくい。
3.生保や信託銀行などの機関投資家は、投資先の企業が同時にお客様でもあるので、株主権の行使にあたって、意思決定に歪みが生じやすい。
4.社外取締役の存在感が希薄である。経営執行から独立した社外取締役が多くはない。東証の指示によって独立役員の選任が行われたが、人数が一人しかいない企業、社外監査役を指名する企業が圧倒的に多い。
企業ガバナンスの強化は企業経営に規律を導き、経営者の株主に対するコミットメントとアカウンタビリティを強力に保証することにつながる。こうした意味でガバナンス問題は日本の成長戦略に正当な位置づけをされなければならない。
このような状況にあってパナソニックがパナソニック電工と三洋電機をTOBし、完全子会社にする意思決定をしたということは、快挙といってもいい。「我々は100メートル競争に中距離走のスピードで挑んでいるのではないか」パナソニックの大坪社長のこの発言は日本企業の多くの経営者の胸に響いたと思いたい。
次回はパナソニックのTOBについて考察してみたい。
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