「コモディティ市場で過当競争を続けている業界にある企業はどうすれば生き延びることができ、しかも高収益の体質に転換できるのだろうか。」
この課題に直接的な回答を出したのがパナソニックだ。7月30日の日経新聞は次のように報じている。
「パナソニックが三洋電機とパナソニック電工を完全子会社化する。グループの電池技術などを結集し、世界屈指の「環境革新企業」へ脱皮を図る。一体運営により意思決定を速めるのが狙いだ。最大8184億円にのぼる買収資金を調達するため、新株発行による増資も検討する。実現すれば1980年以来、約30年ぶりとなる。世界シェアの低下が目立つ日本の電機業界で、復活をかける再編が加速しそうだ。」
2011年の3月を目途に完全子会社化の動きは始まった。この狙いは次の2点にあると考えられる。
1.先進国市場では成熟化した家電事業に代る、リチウムイオン電池、太陽電池、畜電池などの製品群による環境・エネルギー事業への資源集中によって、21世紀における成長戦略の核を形成する。
2.これから急成長を遂げるBRICSはじめ東南アジアの巨大なマーケットでの圧倒的な市場競争力を実現する。
パナソニックは太陽電池分野で、2012年度には日本市場でトップシェアを獲得し、ついで2015年度には世界の3強入りを果たすという宣言をしている。太陽電池セルについてはパナソニックは商用生産を行っておらず、頼りにすべき三洋電機はまだ11位に過ぎないから、15年度までに世界3強入りという目標はとてつもなく高い。
まずは日本でのトップシェアの実現が橋頭保になる。日本の太陽電池市場は戸建て住宅用途が中心で、事業用発電(メガソーラー)を中心に需要が急成長している世界市場とは異なる特殊な性格を持っている。したがって戸建て住宅用製品に特化して技術とマーケティングを磨いてゆけば、世界の住宅用市場での高いシェアもあながち夢ではない。
モノづくりの分野では三洋電機の太陽電池の効率性能は断トツに高い。これに加えてパナソニックの電子技術、パナソニック電工の節電技術、住宅分野での施工技術を効果的に組み合わせてシナジー効果を創っていけば、パナソニックの掲げる"おうちまるごと"、"街まるごと"というキャッチコピーの実現が節電、省エネルギーの分野で可能になる。
また家庭内のすべての電気製品にCPUを組み込んで、これを家庭内LANに繋ぎ、最適な発電、蓄電、買電のシステムを家庭ごとに組み立て、しかもこれをスマートグリッドで結んで発電所単位での電力の最適供給システムを作り上げていけば、大いなる省エネ効果が期待できるわけだ。
マーケティング面でもグループ・シナジーは大きい。パナソニックの家電販売網とパナソニック電工の住宅販売・施工網を組み合わせることで、メーカー、販売者、施工者が一体になった形で、しかも密着して個客に対応できるわけだ。
この販売網の共有は日本だけでなく、インドでも始まっている。8月7日の日経新聞は次のように報じている。
「パナソニックは子会社の三洋電機、パナソニック電工の完全子会社化をにらみ、販路の再編に着手する。家電製品、照明など住宅用機器の一体販売が柱で、まず2010年度中にインドでパナ電工が持つ約1万2000店にのぼる住宅用機器の販路を通じパナソニック、三洋の家電製品を販売する。海外市場で統合効果をいち早く引き出し新興国開拓のモデルとし、日米欧市場でも同様の再編を検討する。国内外の電機大手にはない多様な商品群を効率的に販売する体制を構築、収益力の強化を急ぐ。」
新興国市場でのサムソン電子やLG電子などの韓国勢の存在感が急速に高まるなかで、これに対抗してパナソニックが市場競争力を拡充するためには、グループの資源集中と早急なシナジー効果の創出は避けて通れないということだ。
こうした目的を実現するうえで3社の資源を集中して活用し、スピーディに高い水準の成果を上げ続けなければならない。現状のぬるい提携関係では求められるスピードはけっして出ない。ここに提携から統合への飛躍が求められる理由があった。
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