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IT人材育成とCIOの役割

2008年、CIOはどう動くべきか《その3》

本記事は、高橋氏へのインタビューを基に、編集部がまとめたものです。月刊CIO Magazine 2008年1月号に掲載されました。

 
現場との意識の"ギャップ"を埋める 

 最近、企業のCIO、IT部門長の方からIT人材の育成に関する相談を受ける機会が増えた。「2007年問題」という象徴的な現象が影響しているのかもしれないが、経営トップが掲げる戦略をサポートするために優秀なITスタッフを確保しておくことがいかに重要であるかということが、ユーザー企業の間でも強く認識されるようになってきたことの表れだろう。現に、私自身も策定に深くかかわっているITSS(ITスキル標準)やUISS(情報システムユーザースキル標準)に対する企業の関心も確実に高まっている。自社のIT人材戦略を練り直そうという動きは、2008年においてもますます活発化することになりそうだ。
 
 だが、実際に企業を訪問していて感じるのは、そうしたCIOの考えが現場のスタッフ、とりわけ中間管理層との間で共有できていないということだ。こうした状況では、仮に育成プロジェクトを展開したところで十分な効果は期待できない。テーマが"生身の人"にかかわる問題であるだけに、責任者が発するメッセージや、行動から浮かび上がる姿勢は、関係当事者のモチベーションに直接的に作用するのである。CIOの方々には、自ら率先して"現場に下りていく"というぐらいの意識を持って、この問題に主体的に取り組んでいただきたい。
 

ファンクションを起点に求める人材像を描く

 さて、IT人材の育成というテーマに取り組むにあたって、まず欠かせないのは、「あるべき姿(To Be)」を描くことである。そこで問題になるのが、その描き方だ。

 その際に、私がCIOの方々にお勧めしたいのは、いきなり人材をイメージして必要な「ITスキル」や「コンピテンシー」に着目するのではなく、まずはIT部門に必要だと思われる「ファンクション(機能)」を考えてみるというアプローチである。つまり、自社のビジネスを支えるためにIT部門が持つべき業務機能をあらためて定義し、その機能を回していくために必要な要素として「スキル」を位置づけるというやり方である。
 
 このようにしてTo Beをまとめておけば、「IT部門にどういったスキルが必要なのか」についての関係者のコンセンサスが得やすくなるし、業務機能の次の段階である「人材像」を考えたときに、その責任範囲を機能レベルで明確化することや、持つべき「ITスキル」・「コンピテンシー」で表すことも可能になる。また、アウトソーシングすべき機能とそうすべきではない機能の切り分け、情報システム子会社との機能上での役割分担の明確化──といったことにも活用できる。
 
 このような、ファンクションを切り口としたTo Beの策定は、情報システムにかかわる方であれば元来得意とするところであるはずだ。しかも、リーダーが音頭を取れば、すぐにでも実行に移すことができる。UISSなどは、その強力なツールとなるはずだ。

「変わらないスキル」を社員に持たせる

 ITという世界は、新しい技術が次々と生まれる移り変わりの激しい世界である。一般に「ITスキル」と言われるものの中にも、時間の経過とともに陳腐化するおそれのあるものが少なくない。しかしながら、その一方で、ユーザー企業にとって「変わらずに必要なスキル」というものも確実に存在する。例えば、要求分析や機能分析、データ・モデリングなどがそうである。

 前者については、ITベンダーの力を借りるなど、外部から調達することも考えられるが、後者については、やはりユーザー企業自身がしっかり保持しておくべきスキルだというのが私の考えだ。これらの能力がないと、活用部門のニーズを正確に捉えることができないし、システムに反映することもできない。さらにITベンダーからの提案を適切に評価することもできない。社員に、いかにしてこの「変わらないスキル」を身につけさせ、かつそのレベルを高めていくかということが、CIOにとっては重要な使命となる。

 昨今、俗に"3K労働"などと言われて、若者たちがIT分野への就職を希望しなくなっていることが問題視されている。私もたまに学生と話す機会があるが、我々が学生だったころと比べると、確かにIT関連職種の人気は落ちているようだ。しかしながら、彼らに「IT産業に将来性はあると思うか」と尋ねると、必ずと言っていいほど肯定的な答えが返ってくることも確かである。

 そうした若者たちをひきつけ、獲得して維持していくためにも、迎える立場にいる我々が、IT人材をしっかりと評価できる仕組みを整えておく必要があるのではないか。■

[CIO Magazine編集部 ● インタビュー/構成 text by CIO Magazine]

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