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IT人材育成とCIOの役割

UISS、ITSSなどスキル標準導入の成果物は70点でよし。改善のためのPDCAを運用プロセスで実現せよ! 〜導入失敗事例からの教訓

 

ITSSやUISSの導入・活用について、各企業において様々な取り組みがされています。UISSは、JUASのセミナーやワークショップ開催による普及活動が功を奏して、今まさに盛り上がろうとしている段階です。

 ITSSについてはリリース後6年が経過し、キーワードとして定着した感があります。しかし、その中で多くの企業が成功したとは言えない状況に陥っているのをご存知でしょうか?

 ITSSが出たばかりの2003年の数少ない企業導入事例のほとんどが、人事制度に取り入れたというものでした。現在その時の事例が取り上げられることは、ほとんどありません。また私の知る限り、その仕組みを継続・維持できている企業もほぼ無いようです。

 

過去の失敗と活用の視点


 次の4つの失敗事例は、今回調べてみるとそのまま続けていながらフェードアウトしようとする雰囲気で有名無実であったり、担当者が替わっていて事実上活用を取り止めてしまっているような状態でした。
 

<ケース1 中堅情報子会社>

  • ●A社は、経営判断でITスキル標準を社内導入することを決定し、人事担当者をアサインして取組み開始。
  • ●担当者が独自に調査した後、ほぼそのままの形でITSSを人事制度に導入。

そのまま取入れたことで、会社のビジネスと食い違う役割・責任やスキルまで評価対象となり、技術者の評価が以前より下がる結果となった。役職にまで連動させたので、降格・減給になった技術者も出た。

  • ●技術者の意見

 「長年かかって仕事をこなし会社に貢献して来た結果、役職も上がり給与も上がってきた。それがある日突然、ITSSを導入され、仕事の範囲とかけ離れた 職種を割り当てられ、必要の無いと思われるようなことまで評価され、レベル2だと判定されて降格してしまった。ばかばかしくて続ける気がしない。辞めた い。」

 

 「事前にITSSの位置づけや係わり、評価との繋がりなどの説明を求めたが、納得できるような答えは無かった。単に国が決めたからの一点張りであった。」
 

<ケース2 地方ソフトハウス>

  • ●B社人材育成担当者は、人材育成のためにITSSを取入れるべく調査開始するも、情報が少なく内容の理解ができなかった。大手ITベンダーに相談したところ、教育ベンダーを紹介された。
  • ●営業が来て診断ツールを使った「スキル診断」をすることが、導入の一番早道だと説明を受け、デモを見て結果のグラフなどの説明を受けた。
  • ●とにかくやってみようと技術者全てに、スキル診断ツールで自己診断させた。
  • ●診断結果は、個人ごとにレベル、グラフや傾向など分かり易そうなものばかりで、その時点ではいい材料のように思えて満足した。
  • ●その後教育ベンダーの営業は、診断結果をもとにしたトレーニング受講の提案を持ち込んできたが、大きな金額となっている上、今まであったトレーニングが並んでいるだけで、とても受け入れることができるものではなかった。
  • ●それで、会社として次のステップは?と考えたとき、言われるとおりにした結果、トレーニングの提案を受けた事実しかなく、これでは今までと何の変わりも無いことに気づいた。

 

<ケース3 中堅SIベンダー>

  • ●C社は、早くからITSSに注目していたが、自分たちでは理解度が低いし、上手く導入できないとの考えから、繋がりのある中堅SIベンダーに相談した。
  • ●コンサルタントを紹介してもらったが、今までの人材育成コンサルの実績から信頼できると判断し契約した。
  • ●コンサルタントは、技術者とのインタビューを繰り返し、何種類ものエクセルの表を使って、分析を実施した。約3ヶ月で終了したが、出てきた結果は様々な分析がされていて実態を表現しているように見えた。
  • ●そのあと、自社でそのエクセル表を使って継続運用していく話しだったが、実際にやってみると現場技術者や、担当者に膨大な工数がかかって続けて行けるような内容では無かった。
  • ●また、そのコンサルタントは分析や人事コンサルタントとしてはノウハウを持っていたが、ITSSについての説明が余り無く知識不足だった。結果として無理に合わせているような形になっていた。


<ケース4 中堅SIベンダー>

  • ●D社は、経営者から指示を受けた人材育成担当者が、ITSS導入実施のため、調査をスタートした。
  • ●情報が少なく理解が進まなかったので、経営者にコンサルタントの採用を提案したが、ITスキルのことを自社で出来ないのはおかしい、とはねつけられた。
  • ●色々考えたが分からず、とりあえず診断ツールを使うことにし、XXXX万円かけてツールを購入した。(考えることにお金を使うのはNGで、手段に費用が発生するのはOK?)
  • ●1回目の診断を実施したが、実際と職種が合っていない、スキル内容が抽象的だなど、現場技術者からのクレームが殺到した。
  • ●目標を決めずに、このまま続けても意味が無いと思いつつ、とりあえず1年後の2回目もやることになると考えている。

 

 人事制度、特に処遇制度は、試行錯誤を前提としてリリースするわけにはいきません。社員が働くモチベーションになるものが、不完全だったり間違っていましたと会社として決して言えないからです。


 それをITSSのフレームワークが人事等級枠と似ているからといって、そのまま採用してしまうと大変なことになるというのは、多くの企業が自ら実証してくれました。

 

 ITSS活用視点を定義すると次のようになります。
 

  • ●ITSSをそのまま使えるのは、IT業界内での位置づけを見たり、企業間比較、また人材調達の場合
  • ●企業の事業計画やビジネスモデルをベースに、ビジネス目標達成に貢献する人材の表現は、企業ごとに熟考して定義

この場合に、ITSSなどスキル標準を参照モデルという位置づけで、部品として使うと便利で完成度向上が可能

 

 つまり、企業の人事戦略である人事制度や処遇制度は、ビジネス目標を達成するための手段の1つであり、参考にすることはあっても何かに合わすものではありません。奥深く将来を見据えてしっかり考える必要があるのです。


当初完成度と改善PDCA


 どのような人材がビジネス目標達成に貢献できるか、つまりTo Beである人材像(人材モデル)を定めずして、経営層、管理層、そして社員の皆さんが納得するものを用意できるはずもありません。


 そのTo Be人材モデルは、用意されているスキル標準群(ITSS、UISS、ETSSなど)をうまく活用することにより、誰にでも説明がつくものとして策定することが可能です。


 しかし、企業が人材に関して過去に苦労してきたことが、一朝一夕に解決するわけではなく、初めから完璧なものを作れるはずもありません。あまりにも不完 全なものにしないために、スキル標準を使い正しい手順で策定すれば、70%程度の完成度の人材モデルを構築することは可能です。


 また、人材モデルは策定して終わりではなく、運用のPDCAと同時に、改善のPDCAを廻すことによって、さらに完成度を上げることができるのです。そ ういう意味で、人材モデル策定と同じく運用プロセスや評価プランを立てておくことも重要ですし、運用していく人材も事前に育成しておくのも大事なことで す。


活用当初の取り組み


 以上のことから、ITSS活用の場合によくありますが、名称に標準とついているから無理やり合わせたりするのではなく、経営者として、また人材開発・育成の責任者、推進者として、企業のあるべき姿を目指してスキル標準を活用するのは当たり前です。


 また、導入後にいきなり全面的な人事制度への適用や、処遇への適用は無理があると言わざるを得ません。逆に「評価とは関係ない」と言い放っても、社員の 皆さんはピンと来ないでしょう。スキル標準を活用すると、上司が部下のITスキルなどを明確に把握できるからです。少なくとも頭に情報としてインプットさ れるわけなので、直接的でなくとも評価に無関係と言い切れません。


 そうではなく、当初はMBOの目標設定時に、スキルアップ項目などとして取り入れておき、それを評価の一部として使うというのは、共通認識を高める意味でもうまい活用法と言えるでしょう。


 このように人事制度に全面的に適用せず、見直す前提で改善のPDCAと同調させ、活かせるところから使っていくというのが理想的です。


 また、会社から今後人事制度とどのようにリンクさせて行くかということについてメッセージ発信するのも、社員の皆さんの理解を得、不安にならないようにするために必要なことです。

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