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IT部門は戦略的IT活用の担い手たれ

IT部門 ガキの使いやあらへんで!! 《その8》:経営陣を説得するストーリーボード2

 

「起承転結」や「時系列」との比較検証

前回に続き、「結論から言う」ストリーリーボードを、「起承転結」や「時系列」の報告例と比較し、その有用性を検証してみよう。
このテクニックは、プレゼンテーションや報告書作成の「基本の基本」であるが、意外に軽視されていることが多い。 ITはカタカナや英字の専門用語が多く、経営陣やユーザー部門にとって難解な領域だ。 ここで紹介するテクニックは、彼らの納得を得るために、大いに役立つだろう。
 

「結論から言う」ストーリーボードとは?


前回、「結論から言う」ストーリーボードとして、ニュースの例示を紹介した。 ここで、改めてその内容を記載しておこう。
 

【例示】
本日未明、東京都目黒区の路上で男が銃刀法違反で逮捕された。
男は住所不定の土木作業員、山田太郎(35歳)。
不審なバッグを持って目黒区3丁目付近の住宅街をうろついているところ、不審に思った近所の住民が通報し、駆けつけた警官に短銃の所持を発見され逮捕された。
調べに対し男は、消費者金融に多額の借金があり、金のある家に押し入って金品を奪おうとしていた答えた。
なお、所持していた回転式短銃と銃弾5発は友人の暴力団員から借りたと供述している。

 


この例示の構造をおさらいすると、前回紹介した「図1:例示の構造」となる。 この構造は、「結論」を親としてその「理由」を子に持つロジックツリーだ(前回の「図2:ストーリーボードの構造」を参照)。
この例示を見て「変わり映えしない普通のニュースではないか。」と思う方が多いだろう。 では、このニュースを「起承転結」や「時系列」で報告するとどうなるだろうか。 これがかなり奇妙な報告になることを以下で示そう。


「起承転結」や「時系列」は最悪の報告書!?


多くの報告会や報告書で、「起承転結」や「時系列」で説明しているケースを見る。 しかし、これらは最悪の報告書だと言わざるを得ない。 なぜなら、「起承転結」というのは、物語や小説など話をおもしろおかしくするための方法であり、報告書に活用すると「話としてはおもしろいが、それに予算をつけるわけには行かない」という結果になりかねない。 また、最後に「結論」が来ることから、最後の質疑応答の場で「理由」を改めて問われ、それまでに説明した内容を改めて繰り返すことになる。
「時系列」の場合は、ただ淡々と時間の流れに沿って事象が述べられているだけで「結論」が見えない。 何度か読み直さないと、「結論」や報告のポイントがわからない。 そもそも「時系列」は、事象の記録やプロセスを説明する際の方法であり、何かを理解させる方法ではない。
例えば、自動車教習所で免許証を作る際、番号が記載された窓口をあちこち回るが、何をしているのか今一理解できない。 指示にしたがって順に回ると、とりあえず最後に免許証をくれる。 「時系列」で説明すると、これと同じ状態に陥るのだ。
では、「起承転結」、「時系列」のストーリーボードを、先のニュースの例示を使って具体的に比較してみよう。


「起承転結」のストーリーボードの例


例示のニュースを「起承転結」の流れで記載すると以下の図1になる。
 

図1:「起承転結」の構造

2008083101.jpg

前回紹介した「結論から言う」ストーリーボードの構造、「図1:例示の構造」と上記の図を比較してみてほしい。 大きな違いがあることがおわかりいただけるだろう。
この方法の場合、大きな問題が2つある。 1つ目は、議論があらぬ方向に展開してしまう事、2つ目は前半部分の報告が忘れられてしまうと事だ。
「起承転結」は小説や物語を読み聞かせる方法なので、「昔々、ある男がおりました」とまでは言わずとも、結論が見えない状態で話が進む。 ニュース番組で、キャスターが結論を言わず「XXXという男がいた」、「そして、この男は借金があった」、「おまけに、友人に暴力団員もいた」などという順で話すとどうだろうか。 講談師さながらだろう。 聞いている方は最後になるまで何が言いたいのかわからない。 強盗なのか、放火なのか、人が死んだのか、事件なのか、事故なのか。 わくわくして聞ける人もいるだろうが、回りくどいとイライラする人も多いだろう。
それでは、この方法の1つ目の問題である議論があらぬ方向に展開する具体例を、図1で詳しく見てみよう。 「起」と「承」で受け手が得る情報は、「借金を抱えた住所不定の土木作業員の男が、友人の暴力団員から短銃を借りた」という内容だけである。 受け手はこの情報だけしかないため、「多額の借金を抱えたのは、賭博に興じたからか、それとも家族の病に多額の医療費が必要だったからか?」とか、「住所不定なのに、なぜ金を借りることができるのか?」とか、「土木作業員には暴力団関係者が多いのだろうか?」などという疑問がわき起こってくる。 これが報告会なら、主題でないどうでも良い部分でひっかかり、これらの問いに曖昧に回答すると、「調査が不十分だ」とか、「論理的につじつまが合わない」などと指摘される。 とどのつまり、「では再調査をして報告します」などと余計な作業を受けてしまう。
同じ疑問は「結論から言う」ストーリーでも起きる可能性はあるが、きわめて希だろう。 なぜなら、先に「結論」を述べているので、話し手が言いたい主題は「夜中に銃を持った男がうろついており、物騒な世の中になった」であることが容易に理解できる。 このため、男が住所不定であるとか、友人が暴力団員だったという細部は主たる疑問とならない。 ところが「起承転結」は、始めに部分的な情報しか与えられないので、そこが主題であるかのごとく注力してしまう。
2つ目の問題である報告の前半部分を忘れるという点についても解説しておこう。 「スティング」という有名な映画をご存じだろうか。 ご存じなければ小説でもドラマでも良いので、結末で予想外の大ドンデン返しするストーリーを思い出してほしい。 見終わった後に、「そうか。あのシーンはこのためにあったのか。」などと回想するが、全てを思い出すことはできない。 この手のストーリーは、「結論」を知った後に二度目を見るといろいろな事が見えてくる。 一般的に人間が一度に覚えられる事象は3〜4つ程度、多くても7つまでだそうだ。 「起承転結」ですばらしいストーリーの報告書を作っても、きっちりと理解してもらうためには、二度読んでもらう必要があるのだ。
「起承転結」のストーリーで報告することがいかに危険なことであるか理解いただけただろうか。 読者の周囲にある様々な報告書を見直していただきたい。


「時系列」のストーリーボードの例


「時系列」で述べる場合は、もっと理解できない。 例示のニュースを「時系列」で記載すると以下の図2になる。
 

図2:「時系列」の構造

2008083102.jpg

「結論から言う」ストーリーボードの構造、「図1:例示の構造」と上記の図を改めて比較してほしい。
 「時系列」は時間の経過に沿って事象を知る場合以外は使うべきではない。 例えば、調書だとか、事故発生後の対応だとか、プロセスなどの手順説明だけである。 住民の通報から逮捕までにどれだけの時間がかかったか報告するなら時系列で良いが、事件の全体像を説明しようとすると、それぞれの事象の関係を見つけ出すために何度も読み直す必要がある。
例えば、図2の3日昼過ぎの「短銃を借りた」は、最後の「所持を発見され逮捕された」につながるが、こういった関連を見つけにくい。 同じく最初の「多額の借金」は、最後の「金品を奪おうとした」の理由であるが、良く見ないと関係が見えてこない。 見方によっては、最初の借金については他と無関係に述べられているように見え、この男がどんな人間か紹介しているだけに見える。 この例は単純だが、複雑な内容を「時系列」で説明すると、こういった関係はほとんど理解できない。 また、この例では「結論」が最後に来ているが、時間に沿って列挙するだけの方法なので、「結論」がどこに出てくるかわからない。
以上のようにストーリーの構造を図示すると、「結論から言う」ストーリーの重要性が良く理解いただけるだろう。 極めて基本的なテクニックであるが、本連載のテーマである「経営企画部を凌駕するIT部門」を目指すためには、必ず会得すべきテクニックである。
 

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「結論から言う」ストーリーボードを活用すればば、簡潔で理解しやすい報告書を作成できる。 しかし、多くのスタッフを抱え、時間的な余裕がないプロジェクトでは、前述の内容を教育し周知することは難しいだろう。
そこで、次回はスタッフに細かな指導をしなくとも、テンプレートを活用し手軽に「結論」から述べる報告書を作らせる方法を紹介しよう。

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