前回、前々回と「結論から言う」ストーリーボードを解説し、簡潔で理解しやすいプレゼンテーションや報告書の構成を紹介した。 ただし、多くのスタッフを抱え、時間的な余裕がないプロジェクトなどでは、この内容を教育し周知することは難しい。 そこで、スタッフに細かな指導をしなくても、手軽に「結論から言う」報告書を作らせる方法論、テンプレートを紹介しよう。
「What - Why - How to」法
「What-Why-How to」法とは、図1に示す通り、文書を3つの章立てで構成し、「結論から言う」報告書や提案書を作成する方法だ。
第1章の「What?」は、「我々はなぜそれをすべきか?」というタイトルのもと、「導入部」と「結論」だけを記載する。 「導入部」とは、このプレゼンや報告は何のために行っているのかの説明である。 ここでは、結論や問題点などは一切触れず、聞き手と話し手が同じスタートラインに立つために、報告会の目的だけを簡素に説明する。 そしてその後に、プレゼンや報告の「結論」を述べる。
「導入部」と「結論」は、図1のようにそれぞれ各1ページで計2ページだけの構成で良い。2ページだと内容が薄いとむやみにページ数を増やすことは避けよう。 忙しい役員などは結果だけを知りたがるため、シンプル・イズ・ベストを心がける。
次に第2章の「Why?」で「結論」の「理由」を述べる。 この「理由」は、本連載の前々回≪その7≫の図2「ストーリーボードの構造」で示したように、大きな「理由」を先に述べ、次に詳細な「理由」へと説明して行く。
そして最後の3章の「How to do?」で、具体的なソリューション(解決策)や進め方、体制、スケジュール、見積、制限事項や取り決め事といったことを記載する。
より具体的にイメージできるよう表1にWebによるセルフ購買システムを導入に関する報告例を示した。 紙面の都合でパワーポイントなどで作った実際の報告書例を掲載できないため、要点だけを表形式でまとめた。
表1:セルフ購買システムの報告書例
| 番号 | 資料の目的 | タイトル | 内容 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ | (表紙) | Ⅰ章 What? 何をするべきか? | |
| Ⅰ-1 | 導入部 | 報告の趣旨 |
業績悪化によるコスト削減のため、導入予定のセルフWeb購買システムの延期を検討するよう経営陣から要請があった 本件に関して調査を行い、ここでその結果を報告する |
| Ⅰ-2 | 結論部 | 結 論 | 本システムを導入した方が結果としてコスト削減効果が大きいため、導入続行すべきである |
| Ⅱ | (表紙) | 第Ⅱ章 Why? なぜすべきか? | |
| Ⅱ-1 | 理由1 | 投資効果 | 本システムの投資総額は5000万円であるが、これによる人件費の削減効果、購入商品のコストダウン効果は毎年1~1.5億円に達する |
| Ⅱ-2 | 理由2 | 現状の問題 |
現在、事務用品と備品の購入は、各組織に伝票処理などの業務を担う人員を配置しており、多額の人件費が発生している 各組織で購入先がバラバラであるため、ボリュームディスカウントの効果が活かせず、高い価格で購入している |
| Ⅱ-3 | 理由3 | 新たな改善 | Webに入力された情報をとりまとめて競争入札やリバースオークションを行うなど、今までにない新たな改善が期待できる |
| Ⅲ | (表紙) | 第Ⅲ章 How to? どのように進めるのか? | |
| Ⅲ-1 | 解決策1 | プロジェクトの進め方 | コストを圧縮するため、ユーザー側のスタッフ数や作業量を増やし、ベンダー側の作業部分を削減する |
| Ⅲ-2 | 解決策2 | 体制と役割 | (具体的な組織体制図とそれぞれの役割を明記) |
| Ⅲ-3 | 解決策3 | スケジュール | (変更した導入スケジュールを明記) |
「決議 - 討議 - 次のアクション」法
報告書の類で頻繁に作成するのが会議の議事録だ。 議論が紛糾した会議を議事録にまとめるのは意外と骨が折れる。 また、頻繁に議事録が送られて来る管理職方は、討議内容がダラダラと書かれた議事録にうんざりしている方が多いだろう。
そこで、「結論」から述べるストーリーボードを活用し、テンプレート化しておくと作成する側も読む側も効率的だ。 図2に示す通り、会議の「結論」である「決議事項」を最初に述べる。 その後に、その決議に至った「理由」を「討議内容」に記載する。 そして最後の「次のアクション」に「決議事項」で確定した内容を今後どのように進めて行くか記載する。
なお、一方的に情報を伝えるだけの報告会や連絡会などの場合、ここで紹介するフォーマットは必要ない。 しかし、そのような会議が本当に必要であるか再検討することをお勧めする。 単に状況報告だけであれば、今や電子メールで十分に用が足りるだろう。 また、「決議事項」なしに終わる会議についても、この会議は何を決めるのか、目的を明確にしてスタートするよう進め方を再検討すべきだ。
論客の話法
最後に文書ではなく、口頭で話す場合について解説しよう。 本連載の≪その7≫でも本件について触れたが、優れたニュースキャスターや「朝まで生テレビ」の論客たちは、論理的で解りやすい説明を行う。 実は彼らもここで紹介した「結果」から述べるという方法を活用している。
典型的な話法は、まず始めに「結論」をズバリと言う。 その後に「理由は3つあります。」と付け加え順に理由を説明して行く。 特に「朝まで生テレビ」などを見ていると、発言者が最初に「結論」をズバッと言い、周囲からワッと反論が返ってくるが、それを遮りながら「理由」を述べている。 こうすることで、白熱していても、内容や主題はきっちりと理解できる。
まれにディベートに不慣れな評論家や政治家が出演すると、「結論」を述べずに「理由」から話し出し、俵宗一郎に話を切られてしまう。 「理由」が3つあるとか、ポイントは2つだとか言わずに「理由」から話し出すと、どこまで話が続くのか不明だし、「結論」が解らずに聞いても、賛成意見か反対意見か解らない。 このため、「何が言いたいの解らないよ」とピシャッと話を切られてしまうのだ。
では最後に、「結論」を話し「理由」を述べる話法を、ニュースのネタを例にとって見てみよう。
キャスター:「オレオレ詐欺の被害者は3万人に達し、全国規模で広がっています。 そして、その犯行に及んでいるのはニート世代の若者グループです。 冷静に判断すればひっかかるような手口ではないのですが、いかがでしょうか。」
コメンテーター:「これを単なる詐欺事件として考えるべきではないと思います。 一種の社会現象として捕らえ、社会全体で対策を検討すべきです。(結論)
その理由は3つあります。 1つ目の理由は、お金持ちだけれど孤独な老人がいかに多いかということです。 核家族化が進んだうえに老齢化が襲い、親子の関係か疎遠になっている証でしょう。 家族の絆や地域での老人ケアを考え直す必要があります。
2つ目の理由は、ニート世代と呼ばれる若者と老人の格差問題です。 近年の就職難から、若者世代の収入源は激減しています。 犯罪に走る若者が多い一方で、使い切れない年金を子供に仕送りしている老人がいます。 こういった格差を政府主導で解消する必要があるでしょう。
最後に3つ目の理由は、デジタル機器などコミュニケーションツールのリテラシーです。 携帯電話が普及し、いつでもどこからでも電話をすることができるようになりました。 今事故を起こしたとか、今警察にいるとか、どこからでも連絡を取れるため、臨場感のある嘘を演出できます。 デジタル機器はコミュニケーション手段を格段に進歩させましたが、高齢者はこれについて行けません。 相手が誰なのか知るための番号表示などの使い方を、お年寄りにわかりやすく理解してもらう方法が必要でしょう。」
報告会の質疑応答などで、顧客の役員から鋭い質問を受け、間髪入れずにとうとうと話し出すが、結局のところ何を言わんとしているのか解らないケースを良く見る。 回答した後に「これでお答えになっているでしょうか?」などと付け加えるが、残念ながら答えになっていない。 人前で臆せず饒舌に語る人に限ってこういう解らない回答するケースが多い。
適格な回答をするためには、質問を受けたら一旦じっくり考え、結論を探すべきだ。 多少の沈黙など気にする必要はない。 頭の中で結論を決めて、理由を3〜4つ考える。 2つ以下だと論拠が弱く思われるし、5つ以上になると受け手が消化できない。 慣れてくると、相手の質問を聞きながら「結論」と「理由」を考えることができるようになり、間を開けずに回答できるようになるだろう。
今回紹介した話法を身につけると、同じ内容でも話し方によって、相手の理解に大きな差が出ることに気づくだろう。






Follow CIO on Twitter
Fan CIO on Facebook
RSS
記事一覧

Header_Social_Icon