本連載の前回は、マネジメントシステムの欠如で、IT導入の要件定義が難航するとを解説した。 これを防ぐためには、全社レベルの戦略・目標を、業務レベルや担当レベルにまで分解したマネジメントシステムが必要となる。
しかし、経理部や人事部、IS部門のような間接部門はどうすべきだろうか? 全社レベルの戦略・目標を分解しても、彼らのような間接部門の目標にはつながらいことがある。 そこで、今回は間接部門のマネジメントシステムについて解説しよう。
全社戦略から間接部門の施策や目標は出ない
全社の「戦略・目標」を組織や個人のアクション、目標へ分解する場合、必ずしも全組織、全従業員に分解できるわけではない。 例えば、経理部や総務部は、必ずしも戦略を分解したアクションや目標を担うわけではない。 また、情報システム部門もしかりだ。
例えば、SCMを会社の戦略として掲げている場合、情報システム部門の全員がSCMプロジェクトに関与するわけではない。 既存システムの拡張や維持管理を担当する者もいるはずだ。 そこで、ここからはアーキテクト馴染みのある情報システム部門を例に、「人・組織」を応用したマネジメントシステムを構造を解説しよう。
「人・組織」を応用したマネジメントシステム
図4は戦略を分解したアクションとは別に、「経営の三角定理」」の残る一辺「人・組織」を横串として通したマネジメントシステムだ。 この「人・組織」とは、外資系企業であれば「ジョブ・ディスクリプション」、日本企業であれば「職務記述書」や「職務分掌」などに該当する。
「経営の三角定理」では、「戦略・目標」、「業務・IT」、「人・組織」の3つのバランスが重要であると説明したが、本連載の前回で解説したように「戦略・目標」と「業務・IT」の2辺を再定義した場合、残る1辺の「人・組織」もそれに合わせて変える必要があるのだ。 前述の「うちのクライアントでも方針展開をやっている」というアーキテクトは、そのクライアントが方針展開に合わせて職務分掌も毎年変更しているか確認されたい。 おそらく、もう5 年も更新されずに埃をかぶっているのではないか。 また、外資系企業の場合、ジョブ・ディスクリプションを毎年更新するが、ここで言うように「経営の三角定理」にもとづいて「戦略・目標」や「業務・IT」に合わせて更新しているか確認されたい。
図4では、Aさんは「戦略・目標」から来るSCMプロジェクトの専属要員となっているが、B君は既存システムのメンテナンスの専属である。 そしてCさんはその両方に関与するという具合だ。 そして、要員が不足するならば、CIOや情報システム部長はこのバランスを調整することとなる。
本連載では、経営者や部門長の最も重要仕事とは、経営資源配分の意志決定であることを強調してきた。 この例では、まさにCIOや情報システム部長が「戦略・IT」と「人・組織」のバランスを取り、限りある経営資源をどのように配分すべきか意志決定するのだ。 この意志決定をチャート化したものが図5である。
図5は縦軸に「人・組織」としてジョブ・ディスクリプションを一覧し、横軸には「戦略・目標」から分解された重点施策と日常業務である既存システムを列挙している。 ここでは、山田、井上の2名はプロジェクト支援を専属で担当し、佐藤はジョブ・ディスクリプションの「全社情報システムの資産管理」を担当しながら、兼務でSCMプロジェクトを担当している。 吉田も同じようにジョブ・ディスクリプションに記載の業務を担当しながら、SCMプロジェクト、B部のプロジェクトを兼務している。
この例では、ある部分はアウトソーシングしたり、ある部分は既存要員のスキルアップで対応したり、外部リソースを活用している。 ここでは人のアサインを図示しているだけであるが、経営資源である金(予算)や物(施設や設備)などについても同様の方法で検討することが可能である。 なお、この図5を更に詳細化して行くと、情報システム部門の部門計画に発展させることもできるだろう。
ここで注意するべき点は、伝統的な日本企業は「人・組織」を先に決めてしまう場合があることだ。 終身雇用の発想では、人が辞めることがないので、まずは人ありきで考えるのだろう。 しかし、今のような世の中になれば、むしろ「戦略・目標」やそれを達成する「業務・IT」を決め、それに応じて「人・組織」を決める方が合理的である。 組織論や社内政治で「人・組織」を先に決めてしまい、その後に戦略を分解して方針展開を行うようなやり方では、いつまでたっても「経営の三角定理」のバランスは取れないだろう。






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