前回と今回は、CFOとCIOに共通するIFRS論点をお話ししている。前回がどちらかというとCFO寄りのものであったので、今回はCIOと情報システム担当者に近い論点をご紹介したい。
単体会計と連結会計の中間にある領域
IFRSへの対応を論じる時、関連するアプリケーションシステムとそのユーザー部門として、多くの方は、単体会計システム(会計部門)と連結決算システム(同連結担当部署)の二つを連想されるだろう。外部開示会計に視野を絞ると確かにそうかもしれない。しかし、その中間にグループ会計管理というもう一つの会計管理領域が存在することを指摘したい。
数百社の関係会社を抱える大規模企業集団においては、それらを横断的に管理するための統括管理部門を設けているのではないだろうか。こうした管理部門の役割は、グループ全体のガバナンスといった取締役会等、上からの統治というよりも、より経営効率、業務効率的側面に根ざしたものであると思われる。例えば、各関係会社が置かれている個別環境にあわせた様々な調整や企業グループ全体との調和を図ること、そしてすべての関係会社の業績と財務状況を集中管理し、それらを経営判断や外部開示に供すること、等、が期待されている。過去にも、円高を背景に海外進出が叫ばれ、こうした管理部門に焦点があてられた時期は幾度かあった。今後もしばらくの間、この領域を取り扱うアプリケーションシステムと担当部門は、企業の新しいグローバル化に向けて重要な役割を担っていくはずである。また、外部開示機能との関連では、このグループ会計管理機能は連結決算プロセスの前段にも位置づけられる。
新しいITインフラとIFRSのセットがもたらす単体会計、グループ会計への効果
最新のITインフラにおいては、グローバル・アクセスと適時レスポンス、大量データ処理、スケーラビリティー(拡張可能性)、セキュリティー、といった要素が、同時に一つのインフラで確保できる時代になってきている。世界経済の好不況の波とは関係なく、このITの進歩だけは生物の成長のように止めようがないように思われる。こうした新しいITインフラがIFRSとの組合せで起こすケミストリーを考えてみたい。
前回の二元論(国内基準とIFRS基準の併存)においては、関係会社の所在国別の単体会計とIFRSとのギャップ管理という課題が残るものの、基本的にIFRSの採用で各社の単体会計システム仕様とそこへの各業務システムからの仕訳生成インターフェース仕様は、グローバルベースで統一されることになる。このことは最新のITインフラ能力と相俟って、単体会計システムのソフト、ハード両面でのグループ内統合を助長するはずである。そして、これが意味するところは、各社の単体会計管理とグループ会計管理がストレートに同期するということ、各社での単体会計処理結果がデータ連動なしにそのままグループ会計管理に供せられるということである。二つの会計管理機能の相違点を上げるとすると、取り扱うデータのスコープの相違とグループ会計管理に共通通貨への換算機能があるということだけではないだろうか。これは一見簡素な変化に見えるが、グループ経営管理にとって、全体データの一元処理と一元管理がもたらす極めて価値の高い効果のように思われる。
これまで踏襲されてきた連結会計手続の再評価の時期
我が国で連結決算が有価証券報告書の添付書類として開示対象になったのは1977年のことである。91年には正式に同報告書に組み入れられ、その後2000年に単体財務諸表から主役の座を奪って今日に至っている。連結開示が始まった当時の様子を思い起こしてみよう。会計基準、勘定科目体系、決算期、会計処理プロセス、会計帳簿、関連ITリソースとオペレーション方法、等々、これらの要素はグループ各社間で脈絡なくバラバラに存在していた。親会社は年一回の連結決算開示のために各子会社、関連会社からそのバラバラな決算資料を収集し、そこに重要性を加味したアバウトな自社基準への補正処理や内部消去処理を施して連結決算を仕上げた。2000年会計ビッグバンを経て制度的な改善は重ねられてはいるものの、この親会社のパッチワーク的な決算時集中処理は基本的に現在に至っても変わっていない。経営管理者の方々にここで認識していただきたいのは、最新ITインフラとIFRSのセットが示唆する新しい連結会計環境下では、上記のグループ各社間の会計要素や情報処理インフラの不整合は、殆どが解消でき、これまでの簡便的な連結会計手続を正当化する理由としての意味を失うことである。新しい環境に相応しい手続の精緻化、新たな合理性が求められるべき時期ではないだろうか。
三つの会計領域の統合の選択肢
以上、①単体会計、②グループ会計、③連結会計、についてお話をしてきたが、この三領域を新しい環境下でどう統合していくかについて少し考えてみたい。①②が最新ITインフラの下では自然統合されることは前述の通りであるが、③については選択の余地があるように思われる。
一つ目の選択肢、それはさらに③の領域を①②と統合し、グループのすべての会計機能を最終的に一つの器に集約することである。これは一つの最終理想形と見ることもできる。連結会計は、基本的に単体財務諸表の合算値から企業集団を一つの統一体として見た場合の重複部分(債権と債務、収益と費用、投資と資本、未実現の損益、等)を消去する会計である。グループ内消去対象取引を各社が別々のタイミングと手続で把握し、親会社での連結時点で消去するという方法を疑ってみてはどうだろうか。①②の統合インフラ下では、連結内部取引の多くは単体会計への記帳時点で消去に見合った関連付けや前倒し処理が可能となる。事後的な合算消去手法から単体会計記帳時のリアルタイム識別手法への転換である。勿論、期末特有の評価や外貨換算、注記情報、等々、決算日後に処理しなければならない情報も多く、この手法ですべてが解決できるということではない。しかし、グループ全体の決算構造は、親会社作業を中心にしたCPM(Critical Path Method)型から、グループ全社を巻き込んだJIT(Just in Time)型に変革され、コスト、タイム、質のいずれにおいても大きな効果を生むのではないだろうか。
二つ目の選択肢は、連結決算自体を投資家のための決算と割り切り、経営から分離してCFOの世界に外出しすることである。グループの分社化が垂直型ではなかったり、あるいは内部取引に重要性がないようなケースでは、①②の統合だけでも経営判断に何ら支障は来さないかもしれない。また、日本的グループ企業経営の一つの特徴として、支配しない結合、たとえ過半数の議決権を獲得したとしても、親会社の経営手法を押しつけないケースも多い。そうした経営思考からは、現在の開示用の連結決算技術やそれを駆使したアウトプット情報は、経営的感性からかけ離れたものに映っているかもしれない。この場合、経営者は、開示資料とは異なる独自の指標でグループ経営を行っているはずである。この選択肢を取る場合には、連結会計領域だけが従来通り、別の器で処理されることの方が自然だと思われる。
こうした選択肢は、企業グループの数だけ存在することを申し上げておきたい。
(次回へ)






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