ディーツー コミュニケーションズの事例
2011/02/23NTTドコモの公式サイトにある検索機能を利用すると、検索結果とともに広告が表示される。このうち、行頭に[PR]と表示される広告を扱っているのが、モバイル広告事業会社のディーツー コミュニケーションズ(以下、D2C)である。同社は、2007年から同サイトにおける検索連動型広告を扱ってきているが、より検索キーワードにマッチした広告の表示が求められていた。そのためD2Cは、検索連動型広告の配信システムの全面的な刷新に取り組むことになる。待ち構えていたのは、1年の期間ながら1,000人月を超える規模の開発であった。
text by CIO Magazine編集部
写真右から、D2C 事業開発本部 メディア・ストラテジー・グループ ITアーキテクト担当 上席エキスパートの和賀勝彦氏、同じくエキスパートの沢井 拓氏、ウルシステムズ 事業開発部 部長代理の横山芳成氏
世界初のモバイル事業会社として、2000年に設立されたD2C。同社はNTTドコモの公式サイトにおけるさまざまな広告を扱っているほか、携帯電話各社で利用されているテレビ番組表の広告など、主にモバイル関連のメディアにおける広告を取り扱っている。NTTドコモの公式サイト(iMenu)に提供している検索連動型広告の一部分も、同社が提供するサービスの1つである。
D2Cが検索連動型広告のサービスを提供し始めたのは、2007年。配信システムは問題なく稼働していたが、検索キーワードに対してカテゴリーを割り当てる「カテゴリー・マッチ方式」を採用していたため、検索キーワードに対する詳細な設定が難しく、必ずしも最適な広告が表示されるとは言えない部分があった。広告主は数千社になるというから無理もない。また、他社が提供する検索連動型広告が、検索キーワードに関連性が高い広告を表示する「キーワード・マッチ方式」を採用する傾向にあった。
こうしたことからD2Cは、カテゴリー・マッチ方式よりも最適な広告を表示できるキーワード・マッチ方式を採用した配信システムへの移行を決断した。要件定義を始めたのは2009年10月。開発工数は1,000人月を超える規模の見通しとなったが、本番稼働を2010年10月に定め、ほぼ1年間という短期間での開発完了を目指したのである。
ただし、新システムは同社にとって最大規模の開発案件であることから、開発ベンダーの管理や開発における品質管理などに大きな不安を抱えていた。また、対NTTドコモという意味でも、高い品質が求められる。なぜなら、広告の表示が遅れてしまうと、検索が遅いということになってしまうからだ。そのため、数ミリ秒で広告を出すという性能が求められたことも、同社にとって大きなプレッシャーとなっていた。
そうしたなかでD2Cが重要ポイントとして挙げたのが、システム開発を委託する開発ベンダーの管理である。というのも、開発規模が大きいため、一次受けベンダーの下に二次受けや三次受けとなる開発ベンダーが入るのは必定であり、同社の意図が正確に伝わるのかどうか、同社の目指す品質が確保できるのかなどが懸念されたからだ。また、一次受けベンダーとの緊張関係を維持するためにも、コントロール役を担うパートナーが必要だと考えたという。
そこでD2Cは、一次受けベンダーとは別に、同社側に立って開発ベンダーのコントロール役を担うパートナーの採用を検討。数社によるコンペを経て、D2Cが選んだのはウルシステムズであった。その理由の1つとして、D2C 事業開発本部 メディア・ストラテジー・グループ ITアーキテクト担当 上席エキスパートの和賀勝彦氏は「画面はアジャイル開発、課金などの資金の流れはウォーターフォール開発というように考えていたが、どちらも豊富な実績を持っているのがウルシステムズだった」と語る。以降、D2Cはウルシステムズとともにプロジェクトを推進していった。
品質管理においてD2Cは、開発ベンダーの成果物を確認するにあたり、基本設計書に基づき、機能の振る舞いを1つ1つ確認した。また、短期間の開発を実現するために、開発ベンダー側のシステムテストが完了する前にD2C側でテストを実施するなど、ウルシステムズとともに早期に生涯ポイントを把握するよう努めたのである。
同プロジェクトのポイントは「とにかく前へ進めること」にあった。そのためには発注者側と受注者側との意思の疎通が重要となる。D2Cは、一次受けベンダーのみを窓口とするのではなく、“伝言ゲーム”にならないように二次受けベンダーなども交え、要求や要件、方針を共有していった。
「開発規模が大きいと、どうしても発注側と受注側でギャップが発生する。特に今回のような複数のベンダーを一次受けベンダーが取りまとめるような場合は、その傾向が強くなりがち。ただ、二次受けベンダーと発注者側が直接やり取りするわけにはいかないので、すべての開発者を説明するという姿勢で取り組んだ」とウルシステムズ 事業開発部 部長代理の横山芳成氏は語る。
また、開発現場での判断待ちというタイムロスが生じないように、発注者側であるD2Cが即決できるような体制づくりにも注力した。それには「発注側としても、システム全体を理解するためのオリエンテーションを行った」(横山氏)という。
こうした取り組みについて、D2C 事業開発本部 メディア・ストラテジー・グループ エキスパートの沢井 拓氏は、「ドキュメントをしっかり書いて、さまざまな仕様をガッチリ決めて、そうしたことを順番にやっていくとスケジュールに収まらなかった。開発ベンダーに出向いたりしたのは、時間短縮という意味でも有効だった。ネットビジネスという、時間の流れが早い環境に置かれている当社にとって、こうした取り組みは非常に意味があった」と評価している。結果的に広告配信システムは予定どおりにカットオーバーを迎え、大きなトラブルもなく順調に稼働している。
広告配信システムから得るD2Cの収益は、利用者がリンクをクリックすることによって発生する。そのため、検索キーワードにマッチしていればいるほど、クリック率が上がり、利益が上がることになる。実際、広告配信システムを刷新したことにより「売上げは2倍以上になっている」と和賀氏は語っている。
ただ、こうした効果がある一方で、開発ベンダーのコントロール役を委託した分のコストも気になるところだ。実際、その分のコスト負担について、社内を説得するのには大変だったという。「当社にはシステム開発における品質管理にコストをかけるという文化がなかった。自社の中でやれるのではないか、品質の良いベンダーを使えばいいなどの声があり、社内に品質管理の重要性を理解してもらうのが大変だった」と和賀氏は振り返る。とはいえ、その効果について「全体的にはコストを抑えられたと考えている。外部のパートナーを採用しなければ、コストは1.2倍、開発期間も長くなっていたのでは」と和賀氏は改めてベンダー管理の重要性を実感している。![]()

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