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INDUSTRY REVIEW

SaaS/クラウド市場は完全になくなる!?

ライトナウ・テクノロジーズ CEOに聞く

2012/04/10

米国モンタナ州ボーズマンに本社を置くクラウド・ベンダーのライトナウ・テクノロジーズにとって、CRMはもはや時代遅れのマーケティング手法でしかない。同社CEOのグレッグ・ギアンフォルテ氏は、「企業が今最も力を入れているのは、Webからコールセンターに至るまで、消費者とのあらゆる接点で“カスタマー・エクスペリエンス”を劇的に改善することだ」と考えている。具体的にはどのようなアプローチのなるのか。ギアンフォルテ氏に聞いた。

ジョン・ギャラン ● text by John Gallant

従来の方法では
B2C企業は差別化できない

――カスタマー・エクスペリエンスに着目するきっかけは何だったのでしょうか。

ギアンフォルテ氏:2011年中にB2Cの大手企業を140社ほど訪問しましたが、訪問先で「今取り組んでいることは何か」と聞くと、必ず挙がるのがカスタマー・エクスペリエンスの改善でした。どの会社も、持続可能な差別化を実現するにはカスタマー・エクスペリエンスを向上させるしかないと感じているのです。

――カスタマー・エクスペリエンス・ソフトウェアのコンセプト、およびCRMとの違いついて教えてください。

ギアンフォルテ氏:CRMはこれまで営業部門やコンタクト・センター、マーケティング部門の自動化に使われてきたもので、主に従業員の業務効率を改善することを目的としています。CRMは社内向けのビジネス・アプリケーションなのです。カスタマー・エクスペリエンス・ソフトウェアはこれらすべてに加え、Facebookのファンページを通して企業のプレゼンスを高めたり、外部ページにセルフサービス機能を追加したりといった、コンシューマー向けのコンポーネントも備えています。

 実際、当社が顧客に代わって運用しているWebサイトは、全トラフィックを合算すると世界トップ100サイトの1つになります。CRMのサイトであれば、そこまで大きくならないでしょう。カスタマー・エクスペリエンスのサイトだからこそ、これほどの規模になったのです。

――ライトナウの顧客が「こういうソリューションを求めていた」と言うのはどんなときでしょうか。

ギアンフォルテ氏:クラウド・コンピューティングの長所の1つは、小さく始めて徐々に拡大していけることです。ライトナウのスイートには35本のアプリケーションがありますが、通常、顧客に最初に導入してもらうのは1、2本だけです。また、すべてクラウド上にあることから、実証試験をとても簡単に行えます。実際に、すべてのシステムを試しに使ってもらうことができます。どんな宣伝文句より、試しに使ってもらうのがいちばんでしょう。

 これまでのソフトウェア・ベンダーは、例えば頭痛で苦しんでいる“患者”、すなわち顧客にいきなり外科手術を施そうとしてきました。当社の場合はまず頭痛薬を渡します。長くても2カ月ほどで頭痛は消えるでしょう。こうして信頼関係を築いたうえで再び患者と会い、次の段階に移ります。このエンゲージメント・モデルは、私達にとって多大なメリットがあります。従来のソフトウェア・ベンダーが必要以上に大がかりなソリューションを提供しようとするのとはまったく異なるのです。

 企業が抱える頭痛は、えてしてカスタマー・エクスペリエンスに関連しています。「返品率があまりに高い」といった悩みから、コールセンターで自社開発のアプリケーションを使っているが不具合が多発している、あるいはオンラインでの売上げをもっと伸ばしたいといったものまでさまざまです。当社が取り組むのはこうしたビジネス問題であり、プロジェクトの成功に向けてIT部門と直接協力していきます。

――クラウドとSaaSについてお聞きしますが、あなたは顧客がSaaSベンダーとの契約で抱える問題について、かなり批判的な意見を口にしていますね。SaaS契約の何が問題で、どうすればもっと良くなるとお考えですか。

ギアンフォルテ氏:IT業界では、ソフトウェアやデータをクラウドから提供するというデリバリー・モデルを10年にわたって進化させてきましたが、同時にエンタープライズ・ソフトウェア・ライセンスの悪い面もそのまま引きずっています。そこで2年ほど前、当社は契約の新たな標準として「クラウド・サービス・アグリーメント(CSA)」を採用し、あらゆる権限を顧客の手に委ねることにしたのです。

 CSAはサブスクリプション・サービスですから、顧客は多額の初期投資を行わず、どれを使うかを自分たちで管理することになります。そもそも使いもしないソフトウェアを顧客が強制的に買わされるのはおかしな話でしょう。当社の標準契約では、顧客が年に1度、ペナルティなしでソフトウェアを追加/削除できるようにしています。

 クラウド業界はもっと顧客の権利を尊重すべきではないかと思います。この業界はソフトウェアのデリバリーという面ではすばらしい成果を上げましたが、昔ながらのひどい契約慣行を排除できていないのも確かです。実際、当社の顧客からは、「今後ベンダーと契約する際はライトナウのCSAを標準にしたい」との声が挙がっています。他のベンダーにとってはうれしくないでしょうが、製品が立派に機能してそれら製品をしっかりサポートしていこうという気持ちがあるなら、CSAのような契約形態を標準にしても何らリスクはないはずです。

――顧客がクラウド・プロバイダーを選定するうえで注意するべき点は何でしょう。

ギアンフォルテ氏:価格の確実性について知っておくべきでしょう。1年契約を交わすだけなら大してリスクはないと思うかもしれません。しかし、いったんシステムをインストールしたら、従来のオンプレミス型システムと同じく簡単に捨てられるものではありません。それでもオンプレスに比べれば少しは乗り換えが容易かもしれませんが、ユーザーが想像するほど単純ではないのです。エンタープライズ・アプリケーションを導入するのとはわけが違います。確かに1年だけの契約なら深くコミットしていることにはならないでしょうが、一度組み込んでしまった場合に、4年後、5年後、6年後の価格がどうなっているか分かりますか? ここが重要なポイントです。

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