昨年9月、米アボセントの買収によって、同社の独立事業部門となったLANDesk Software。クライアントやサーバでのシステムとセキュリティの統合管理に強みを持つLANDeskと、データセンター管理やKVM(キーボード、ビデオ、マウス)スイッチを得意とするアボセントとの統合は、ユーザー企業にどのようなメリットをもたらすのだろうか。本稿では、両社の事業戦略と製品ロードマップから、新生LANDeskが提唱する“あらゆるITプラットフォームの一元管理”の具体像を探る。

米アボセントでLANDesk Software部門ゼネラル・マネジャーを務めるスティーブ・デイリー氏
企業のITシステムは多様化・複雑化する一方だ。社内のサーバやクライアントPCをはじめとして、リモート環境のPCやモバイル端末、ネットワーク機器、電源、データセンターのサーバやストレージなど、管理しなければならない機器は増え続けている。また、管理の対象領域も、システムの運用管理だけではなく、セキュリティ管理やサービス管理にまで及んでいる。企業のユーザーは、機器や対象領域ごとに複数台の管理サーバを使用するという手間のかかる環境に置かれているのが現状だ。
アボセントとLANDesk Softwareの統合の背景には、そうした状況下でユーザーが抱えている課題にいかに応えていくかという、両社共通のビジョンがあった。米アボセントでLANDesk Software部門ゼネラル・マネジャーを務めるスティーブ・デイリー氏は、その課題を、複雑化するITシステムと、サービスとして簡単な利用を望むエンドユーザーとの間のギャップと説明する。
例えば、メール・サービスに障害が発生した場合、エンドユーザーは、その原因がモバイル端末のセキュリティ対策にあるのか、データセンターにあるメール・サーバの運用の障害にあるのかには関心がない。関心があるのは、メールを正常に使いたいという点のみである。
一方、IT管理者は、メール・サービスをいち早く復旧するために、問題の切り分けを速やかに行いたいと思っている。プラットフォームごとに別々のコンソールを用いるのではなく、単一の画面でモバイル端末からデータセンターまでを一元的に見通せるような管理方法を望んでいるわけだ。
とはいえ、ハンドヘルドとデータセンターを単一のコンソールで管理できるようなソリューションは多くはない。それは、(1)ベンダーの得意とする製品ラインの違い、(2)管理に必要なテクノロジーの違い、(3)管理の対象領域(システム/セキュリティ/サービス)の違い、という3点を克服することが簡単ではないからだ。
デイリー氏によると、この違いを解消する最善の策が、両社の統合だった。LANDeskは、クライアントPCを中心とした、システム、セキュリティ、サービスの統合管理に強みを持っている。一方、アボセントは、データセンターの管理やネットワーク関連機器を得意としている。
また、LANDeskの持つ機器へのアクセス(接続)技術が、稼働中の機器を管理するインバンド(in-band)方式であるのに対し、アボセントの持つ技術は、稼働中ではない機器であっても管理できるアウトバンド(out of band)方式である。
つまり、「両社が統合することで、製品ラインやテクノロジーが補完・融合され、理想的な相乗効果が生み出せる」(デイリー氏)というわけである。その結果として、ユーザーは、ハンドヘルドからデータセンターまでの一元管理が可能になり、アクセス(インバンドとアウトバンド)、システム管理、セキュリティ管理、サービス管理の4領域において統合管理できる環境を手に入れられることになるのである(図1)。
アボセントとLANDesk Softwareのターゲット市場のセグメント

図1:横軸に6分野の製品ライン、縦軸に管理レベル(Depth of Control)をとって両者の強みを分類
では、ユーザーは具体的にどのような機能を利用できるようになるのか。これについては、両社の製品ロードマップから見てとることができる。
製品ロードマップは、両社の製品ラインとそれぞれの持つテクノロジーの強みを組み合わせたものとなっている(図2)。図に示すように、製品セグメントは、クライアント、モバイル、サーバ、ネットワーク、ストレージ、データセンターの6つから成り、それぞれが、システム、セキュリティ、サービスの3つの領域に属するという構成である。
2007年以降のLANDesk Software製品ロードマップ

図2:注力する分野として、2007年が水色、2007年4月と10月の2度にわたるバージョンアップが網、2008年以降が黄をそれぞれ表す
図中の水色の部分が2007年度に注力する分野である。具体的には、クライアントやサーバのセキュリティ管理(ファイアウォール、マルウェア対策など)やシステム管理(ソフトウェア配布、プロビジョニングなど)が中心となる。そして、2008年以降は、図中の黄色の部分、すなわち、ネットワークやストレージ、データセンターのサービス管理(プロセス管理、キャパシティ・プランニングなど)に取り組んでいくというのが大きな流れとなっている。
ここで注目できるのは、図中の網で示された部分における取り組みである。これは、今年の4月、10月に予定している、LANDeskのスイート製品「LANDesk Management Suite」のメジャー・バージョンアップを示している。このバージョンアップでは、データセンターにおけるパッチ・マネジメントをはじめとして、プロビジョニング、ソフトウェア・ライセンス管理、ソフトウェア配布、リモート管理、インベントリ管理が実現する予定だ。
また、同時期には、クライアント管理の機能として、不審な動作をしたPCを隔離する「Host-based Intrusion Prevention」(HIPS:ホスト型侵入防止)も実装される。これにより、昨今の脅威となっている、ゼロデイ・アタックに対処することが可能になる。
さらに注目できるのは、2008年以降に登場する、データセンターにおける仮想化管理(Virtualization Management)と電源管理(Power Management)である。データセンターにおける発熱や電力不足は近年の大きな課題だが、VMwareやXenなどの仮想化ソフトウェアに対応したうえで、管理コンソール上から、消費電力の制御も行うことができるようになるという。
こうして見ると、両社の統合がユーザーにもたらすメリットはことのほか大きいと言えるだろう。

LANDesk Softwareでアジア太平洋・ラテンアメリカ地域セールス担当バイスプレジデントを務めるロン・ギボンズ氏
LANDesk Softwareは、アボセントの独立事業部門となるが、従来の販売/サポート体制を維持したうえで、さらに強化していくという事業戦略をとる。なかでも、技術サポートについては、日本向けの技術スタッフやサポート・スタッフを増員し、既存のユーザーの要望に速やかに対応できるようにする計画だ。
LANDesk Softwareでアジア太平洋・ラテンアメリカ地域セールス担当バイスプレジデントを務めるロン・ギボンズ氏は、「単なる製品のローカライゼーションにとどまらず、日本市場にあった販売体制とサポート体制を築いていく。これにより、日本特有の顧客ニーズに対応するつもりだ」とその意気込みを語る。
同氏が日本特有のニーズとして挙げるものの1つには、金融商品取引法(通称:日本版SOX法)も含まれている。同法で求める内部統制の構築にあたっては、アクセス制御を中心とした、システムとセキュリティの統合管理は有効な方法であり、その支援策を積極的に行っていく予定だという。
なお、両社の日本での製品展開は、これまでどおり、LANDesk Software代表取締役社長の今井幹夫氏と、アボセントジャパン代表取締役社長の小林俊彦氏が指揮をとる。そして、それぞれが独立して製品を展開するなかで、“サービス指向管理”のリーダーという評価をユーザーから得ていきたい考えだ。
買収発表から数カ月を経て、徐々に具体像を表し始めた新生LANDesk Software。今年4月以降、同社から新製品が発表されるなかで、ユーザーは、よりはっきりとしたメリットを享受できるようになろう。■