HOME > 特別企画 > 探求!ビジネス成長とIT革新 > 【HP特別連載コラム】探求!ビジネス成長とIT革新|シリ...

探求!ビジネス成長とIT革新

関連カテゴリー: 探求!ビジネス成長とIT革新

【HP特別連載コラム】探求!ビジネス成長とIT革新|シリーズ2:提案型IT部門と戦略的ITインフラの作り方(9)

【第9回】インフラ・サービスを提供して行くための組織モデルとガバナンス(その5)

2011/10/26
CIO Online Special

前回は、「インフラ・サービス」を成立させるための予算化の方式や評価方法について解説しました。今回は、ITサービス提供組織にあり方について説明します。

文=藤田 政士

戦略機能の組織化で提案型のIT部門へ

 事業部門や利用部門からの要求にこたえるだけの受け身型のIT部門ではなく、提案型のIT部門として、積極的かつ能動的にITサービスを提供していく―― その実現に向けては、ITサービスの戦略立案から、サービスの設計、実装、さらには提供に至るまでのライフサイクル(第5回、第6回連載参照)に合わせて、IT部門の組織(機能)を構成することが大切となります。

 この組織構造の中で、まず重要なのがサービス戦略を立案する機能です。ここでは、顧客やシステム利用者のデマンドを理解し、必要なサービスのポートフォリオ(組み合わせ)を準備しなければなりません。そのため、サービス戦略の立案者には、顧客/利用者のニーズを的確に理解しうるマーケテイング的なセンスが求められます。しかも、昨今のビジネス環境や技術は変化が激しく、ポートフォリオの継続的な見直しも必須となります。そのため、先進的な企業の中には、この戦略組織の中にITサービスのマーケテイングやR&Dの機能を持たせているところもあります。

 従来のIT部門は、この戦略立案の機能が弱く、ビジネス・サイドの要求を満たすことだけに注力してきました。そうした受け身の姿勢が、結果として、サイロ型のシステムや個別対応のインフラを数多く生むことにつながってきたわけです。そうした旧弊を断ち切るためにも、共通インフラをベースとした共通サービスを準備し、カタログ・ベースでのサービス提案を行い、標準のSLAによって管理していくことが重要となるのです。

“生産ライン”管理を司るサービス技術組織

 次に必要となるのは、戦略組織によって企画されたサービスを実装し、運用フェースへとつなげていくサービス技術組織となります。

 この組織が担うのは、サービス提供のための環境の構築であり、最適化です。すなわち、可能なかぎり標準化された共有インフラを土台に、標準のSLAが定める品質/コストでサービスが提供できるようにすることが、この組織の使命ということになります。

 この組織では、新規サービスの導入時に必要とされる技術を評価/検証して、新たな環境を構築/導入します。その際、新技術を無暗に導入するのではなく、共通化されたインフラとの親和性を評価し、標準化の視点からの導入を行います。また、既存のサービスに関しては、必要な可用性や品質を守るために共通インフラ環境の最適化を行います。したがって、この組織は、共通インフラの構成管理、変更管理、本番移行リリースについての責任も持つことになります。

 このサービス技術組織は、工場に例えるなら、生産技術部門であり、必要な製品(サービス)安定して供給するための生産ラインの構築を行い、ライン作業者(オペレーター)が生産(サービス提供)の効率化が行えるように環境を管理することになります。また、生産技術部門が品質向上や生産性向上に結びつく技術を常に調査/評価し、設備の刷新を行っているように、サービス技術部門も常に新しい技術を評価し、共通インフラの刷新等を図っていく必要があります。

適正品質とコストでオペレーションを遂行するサービス運用組織

 サービス運用組織は、実際のサービス提供(運用)を担う専門組織です。

 サービス運用(オペレーション)は、反復的かつ継続的な作業であり、高効率化が組織運営上の大きな指針となります。ただし、この組織の努力だけでは運用の効率化にも限界があります。実際、例外の排除やオペレーションのシンプル化、自動化などは、サービス運用の前工程であるサービス技術部門の実装に大きく依存しているケースが多く見受けられます。したがって、サービス運用組織には、オペレーション上の改善余地について、常に前工程にフィードバックすることが求められます。

 サービスは使われて初めて価値を生むものです。それだけに、サービスの運用組織は、実際のサービス提供で培ってきた現場での経験を基に、継続的な改善を図らなければなりません。その際、運用組織は与えられた環境や条件を固定的なものと考えず、戦略組織や技術組織といった他部門に対しても常に改善の働きかけをすることが大切です。

ビジネスとしてのIT組織の運営

 戦略的で高効率なITの提供は、ITの運営をビジネスの運営そのものと見なし、遂行するによって実現されるものです。よって、IT部門は今後、他のビジネス部門と同じ素早さで環境の変化をとらえ、必要に応じて自らを能動的に変化させうる能力を獲得しなければなりません。そのためには、ITサービスに対するニーズを迅速につかみ、正しく技術を評価し、高効率な運用が行える環境を整備していかねばなりません。そして、この命題を遂行するには、サービスの戦略立案(企画)と技術、運用の機能を明確に分離させることが必須とされます。さらに言えば、サービスの企画、技術、運用の各機能内において、(一般のビジネス部門がそうであるように)、提供するサービスや組織の能力(業績)の客観的な評価を行う管理機能の整備も必要とされるのです(実行系と管理系機能の分離)。

 以下、ご参考までに上記の内容を踏まえたITサービス提供組織のモデル例を示します。

図:ITサービス提供組織モデル例

 IT部門は今後、企業内の特殊な組織ではなく、ITサービスによるビジネス貢献を業績として評価される部門へと変化しなければならないのです。なお次回は、本連載の最終回として、提案型IT部門と戦略的ITインフラの作り方のまとめを記載する予定です

著者プロフィール

藤田 政士(ふじた まさし) 

HP入社から20年以上、オープン系システムのアーキテクトとして各種システムの構築を経験。現在は主にITガバナンスやITSMのコンサルテイングに従事
HP社Distinguished Consultant TOGAF8 Practitioner

 

go_to_top

ページの先頭へ戻る