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人材育成/IT組織改革

イノベーションはみんなの仕事

旗振り役はもちろんCIOが務めねばならない

2011/06/09

私は航空会社ジェットブルーのCIOとして、IT部門全体にイノベーション文化を浸透させてきた。その取り組みや考え方などを紹介しよう。

ジョー・イング ● text by Joe Eng

IT部門はただの運用屋ではない

 イノベーションは、優れたIT運営とは相反するものだと考える人がいる。このような声は、IT業界の内部にとどまらない。つまるところIT部門には、プロセスや手法、スタンダードなどにのっとった運用が求められる。よいIT部門とは、何よりも一貫性のある運営を実現している組織のことなのだ。このためイノベーションに疑問を持つ者は、イノベーションはスタンダードに反するもので、ITにはふさわしくないと主張する。

 しかし、この主張は誤りだ。優秀なIT組織で働く機会に恵まれてきた私は、身をもってそうした主張が誤りであることを経験してきた。ただしこう反駁するためには、斬新な製品やサービスといった狭義のイノベーションから、より広義のイノベーションに目を向けなければならない。狭義のイノベーションでは、IT部門でイノベーターとなれるのはほんの一握りのチームだけだ。

 一流のIT部門のイノベーションには、より迅速に効率的なオペレーションを低コストで実現するためプロセスを変化させるといった、通常業務に見られるイニシアチブも含まれる。

 CIOたる我々の課題(そして機会)となるのは、自らの言動を通じ、イノベーションの定義を組織に啓蒙していくことである。イノベーションを組織文化の中に浸透させ、イノベーションを体現できる人材を特定しなければならない。

人任せにせず自分で動くことからイノベーションは始まる

 自分の配下のITスタッフには、イノベーションとは、私やほかのビジネス・リーダーから指示をされる前に積極的に改善に取り組むことだと理解してもらいたい。以前、金融サービス・インフラのプロバイダーであるスイフトでCIOを務めていたとき、私は自分の考え方をまずメールを通じて訴え始めた。またこの啓蒙活動を底上げするために、四半期に1度のタウンホール・ミーティングでも、優れたイノベーションに携わった個人やグループを表彰した。この表彰では、先入観の塊であったITシステム運用チームに特に注目し、イノベーションの事例を探し出すように努めた。こうした取り組みにより、誰もが新しいアイデアを自由に試せる組織文化が構築できたのである。

 取り組み初期のある事例を紹介しよう。ベンダーが解決できない問題があり、エンドユーザーがフラストレーションを募らせていることに気づいたあるITスタッフの話だ。何度か解決が試みられたが、問題は完全には払拭できなかった。そこで同スタッフは、手をこまねいてベンダーの問題解決を待つのではなく、自ら解決策を考案した。多くのベンダーが混在している環境では、問題はベンダーの責任にし、解決も任せきりにすることがよくある。そのなかで言い訳1つせず、積極的にイノベーションに富んだ行動を見せてくれた同スタッフの行動はきわめて新鮮なものだった。

イノベーションのイメージを新たにし、チームの結束を

 このように、ささいなことでも業績を皆の前で表彰することでITスタッフはイノベーションに対する見方を変えるようになり、表彰対象を選ぶのも大変ではなくなっていった。しかし、IT部門全員が自分自身を“イノベーター”と見なすようにするためには、持続的な努力と方向性の提示が必要である。私が勤める航空会社、米国ジェットブルーでテスト担当チームと会議を行っていた際、最近どのようなイノベーションを考えたか聞いてみた。彼らは、特に何もない、テストをすることだけが仕事だと答えたのである。そこで私は、「人目を引くような改善をしなくても、君たちを含め皆がイノベーターなのだ」という持論を繰り返してみた。リーダーがイノベーションを広義にとらえ、チームが行ったイノベーションの事例を認識するようにしていけば、企業にとってITは重要なイノベーション提供者になり得る。ITを新製品に適用させるばかりではなく、新しい優れたビジネス・プロセスの創出といった多くの機会が生まれるのだ。その機会をつかまえる一方で、全員がITや会社全体の改善に努力するよう訴えていけば、チーム全体の結束力も高まり、「イノベーターは自分たちとは異なる何か“かっこいい”存在だ」という偏見が組織を駄目にすることもなくなるだろう。

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