ビジネス価値向上に向けた関係構築法
2012/03/08優秀なCIOはIT部門の評判を高め、ほかの経営幹部と強固な関係を築いている。
ダイアン・フランク ● text by Diane Frank
関係を管理する

モトローラ・ソリューションズの上級副社長兼CIO、レスリー・ジョーンズ氏言わく、システムがすでに実装され、採用されたあとであっても、ITのメトリクスは業績に基づくものにすべきだそうだ。 photo:Kevin Miyazaki
困難な時期に築かれた関係は長続きするが、それは当事者がそのための努力を払う場合に限られると、米国トヨタ自動車販売(TMS:Toyota Motor Sales, U.S.A.)の副社長兼CIO、ザック・ヒックス氏は語る。IT部門が広報に関する支援を提供したトヨタ車のリコールを経て、ヒックス氏は新たな味方を得た。上級経営チームがIT部門を単なるシステム・プロバイダーではなく、ビジネス・ソリューションのプロバイダーやプロセス変革のパートナーとして見始めたのである。そのお陰で、ヒックス氏とIT部門は、ビジネスに影響を与え、各製品ラインの今後について検討する新しい機会を手にした。
しかし、そうした影響力は、時を選んで慎重に行使しなければならない。
「いつも細心の注意を払っている。『自分が出て行っていろいろなやり方を変えてもらうのに今は適切なタイミングだろうか』、あるいは、『繁忙期なので提案は控え、彼らを放っておくべき時だろうか』といった具合に、考えを巡らせている」とヒックス氏は言う。
「そうすることが、ビジネス・サイドとの関係を能動的に管理することにつながる」(ヒックス氏)
良好な関係がもたらすメリットは、ビジネス担当の役員がIT部門の意見を無視したり、受け流したりするのではなく、きちんと聞いてくれるという点にある。例えば、トヨタが車載マルチメディア・システム「Entune」を開発していたとき、ヒックス氏は、自動車業界でテレマティクスの重要性が高まっていることを認めながらも、Entuneは基本的に高度なカーナビにスマートフォンの機能を融合したものであると注意を促したうえで、その潜在的なリスクを指摘した。ヒックス氏は経営陣に対し、「セキュリティやプライバシーを適切に管理できる機能をシステムに組み込まれなければ、広く抗議の声が挙がるだろう。トヨタは対応できるのか」と問いかけたのである。
経営陣は同氏の提言を重く受け止めた。その結果、ヒックス氏がトヨタのEntuneの取り組みに全面的に関与して、同社が開発するサービスの安全性とセキュリティの確保を目的とした上級経営幹部によるタスクフォースの座長を務めることになった。
また、ITリーダーとビジネス・リーダーが協力し合えば、お互いの課題を解決できることもある。
ファースト・データのCTO(最高技術責任者)兼グローバル・オペレーション&テクノロジー担当上級副社長、ケビン・カーン氏は、買収に伴って同社に加わった組織や部署から多数寄せられた、IT開発プロジェクトへのビジネス上の要求に手を焼いていた。買収は同社の成長に大きく貢献していたが、多くの組織や部署がばらばらに活動し、それらからの要求がまちまちであるという状況をもたらしていた。
そこでカーン氏は、こうした要求に優先順位を付ける基準となるグローバル・オペレーティング・モデルの作成に着手した。すると、新製品開発担当の役員も似た問題を抱えていることが分かったという。
ファースト・データのグローバル製品管理&イノベーション担当上級副社長であるマーク・ヘリントン氏は、新製品のアイデアのうち、どれを発展させるかを決めるプロセスを確立したいと考えていた。「我々は、『買収による成長から、独自の製品開発による成長へ』という180度の方向転換を目指していた」と同氏は語る。しかし、その実現の大きな妨げの1つとなっていたのが、IT開発に関する要求の優先順位付けが適切になされていないことだった。そのために多くのカスタマイズが行われ、ITシステムは柔軟な拡張や変更ができないものになっており、同社にとってシステムの健全性は大きく損なわれていたと、ヘリントン氏は説明する。280人以上の社員が、IT開発に関する要求を提出する権限を持っており、多くの場合、最も声の大きい要求者が自分の要求を真っ先に通していたという。
そこでヘリントン氏は、製品開発サイドのために、要求の優先順位付けを行える一貫したプロセスの構築に乗り出した。IT部門にこの目標を説明して協力を求めた際、同氏は、この試みがカーン氏がIT部門のために進めていたグローバル・オペレーティング・モデルの作成と相通じるものであることを知って喜んだ。
ヘリントン氏とカーン氏は、製品開発サイドとITサイドの両方が、製品とITシステムの開発および提供に関する要求を管理できる共通プロセスを構築した。今では、すべての要求が、組織や部署、地域の区分に従ってではなく、社内の各業務のニーズと目標を定義したソリューション・マップに基づいて、管理されるようになっている。その結果、IT部門に要求が届くルートは2つだけになった。1つは北米からのルート、もう1つは北米以外の地域からのルートだ。
「お陰で我々は、外部顧客と社内の期待に応えやすくなった。どの要求に対応するかを決めたら、仕様を固めて、開発に入らなければならないが、要求管理プロセスを整備したお陰で、仕様をまとめるまでの一連の過程がスピードアップしたほか、手戻りやカスタマイズも大幅に減り、作業の見通しが立ちやすくなった」(カーン氏)

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