“先進ITによるブレイクスルー”を成し遂げるためのヒントを探る
2011/11/28急速なテクノロジーの進化と大きく変化するビジネス環境の中で、先進ITを積極的に取り組み、企業競争力を高めていくことは、今日の企業にとって大きな経営命題の1つとなっている。しかしながら、それを実現するのはそう簡単なことではないのも事実だ。今年10月14日に東京・品川のザ・グランドホールで開催されたイベント「ITRエグゼクティブ・フィーラム 先進ITが牽引するビジネス・イノベーション ~クラウド/スマートフォン時代の企業ITのあり方~」では、先進ITへの取り組みでCIOが果たすべき役割や、具体的な取り組みのノウハウが示された。
先進ITにどう取り組むか
クラウド・コンピューティングやスマートデバイス、ソーシャルメディア、そしてビッグデータ……次々と登場する“先進IT”の登場に伴い、それらの有効活用に積極的に取り組み、成果を上げているユーザー企業が登場しつつある。だがその一方で、新しいテクノロジーに慎重な姿勢を堅持しているユーザー企業もまた少なくない。
そうしたなか、「ITRエグゼクティブ・フィーラム」では、先進ITを活用してビジネス上の成果獲得に成功した事例の紹介のほか、企業は先進ITにどう対峙し、具体的にどう活用していくべきかの道筋が示された。
ITRのシニア・アナリスト、甲元宏明氏による基調講演「先進ITとのつきあい方」に続いて用意されたテクノロジー・セッションでは、インターシステムズジャパン ビジネスディベロップメント シニア・マネージャーの佐藤比呂志氏が登壇。「ITによるイノベーション・ブレイクスルーの実現」と題して、ビジネスの変革を牽引するために情報システムに求められる要素や、ブレイクスルーの実現を支えるテクノロジーの考察、そしてITを活用してビジネス・イノベーションを実現するためのヒントが紹介された。
先進ITを活用するうえで、企業の情報システムにも大きな変革が求められている。とりわけ複雑なデータの激増に伴うビッグデータへの対応は急務である。こうした背景を受け佐藤氏は、ブレイクスルーを実現するアプリケーションに求められる要素として「マスパーソナリゼーションの提供」「100%のデータ開放」「知的行動を起こす」という3つを提唱した。
「スマートフォンやタブレットPC、ソーシャルメディアなど、新しいテクノロジーをビジネスに生かすことへの期待は大きいが、現実には個人と企業での利用状況には大きなギャップがある」と指摘した佐藤氏は、マスパーソナリゼーションを実現するための技術要件として、最新UIを生かす能力やリッチな機能、粗結合なインタフェース、そしてあらゆるユーザーに対応できる超スケーラビリティなどを挙げた。
「マスパーソナリゼーションが進めば、コンピュータを使う機会も増え、データの量も増大する」(佐藤氏)
次に、100%のデータ解放で求められる技術要件として同氏が掲げるのが、非構造データのリッチなサポート、アプリケーションやシステムの幅広い接続性、そして莫大な量のデータを処理することができる超スケーラビリティの3つだ。
そして知的行動については、「今後は構造/非構造データにかかわらず、すべてのデータの意味を理解しなければならなくなるだろう。そしてその次の段階として、こうした理解に基づいて何らかの行動を起こすことが必要となる。その繰り返しから、新たな価値創造を行うことがこれからの企業には求められている」と佐藤氏は主張する。
そして佐藤氏が言う3つの要件を満たすためのプラットフォームとは、リアルタイムな量的分析と質的分析を行うソリューション、アプリケーション、ユーザー、コミュニティをつなぐ接続性を有するソリューション、構造/非構造データをとらえて格納・共有する情報基盤から構成されるものとなる。インターシステムズのコアテクノロジーには、それぞれを担うソリューションが存在する。それは、先進の分析エンジン「DeepSee」、ユニバーサル統合プラットフォーム「Ensemble」、そして多次元DBの「Caché」だ。
佐藤氏は、これら同社のソリューションを導入してビジネスにイノベーションをもたらした海外での成功事例を紹介。このうち、欧州宇宙機関では、世界最大かつ最も正確な銀河の3次元マップを作成するために、超高速DBのCachéを導入して10億個もの天体のデータの取得を目指しているという。
会場に向け佐藤氏は、「ブレイクスルーを成し遂げるためには、本当にやりたいことの実現に向けて集中できる環境を支えるプラットフォームがカギを握る」と訴えて、壇を後にした。
CIOの役割は
実務型から戦略型に
最後に行われたセッションでは、インターシステムズジャパンの代表取締役社長/日本統括責任者の植松裕史氏が、「ITを活用したビジネス・イノベーション 先進IT戦略企業にみる成功事例」と題して講演を行った。
先進IT戦略企業とは、「ITを経営戦略と一体化しながら企業の競争力を高めている企業」(植松氏)を指す。昨今、ビジネスはますますグローバル化しており、そのインパクトは従来以上に大きくなっている。そうしたなか、前例のない円高と欧米市場の落ち込みなどによって日系製造業の海外移転が加速している。そこで、経営革新と業務改革が継続的に求められるようになり、ITの活用はさらに重要となっているのである。
「現在は、ビジネス環境、経済環境、IT環境、このうちいずれでも大変な変化が起きている。ITの活用を含めていかに付加価値を創造するかが企業の競争力を左右するようになった。そこでのキーワードは、『イノベーション』『CIO』、そして『経営戦略とIT戦略の一体化』だ」と植松氏は主張するとともに、苦しい時ほどITを活用した生産革新でコスト競争力に磨きをかけるとするキヤノンの内田恒二社長の言を紹介した。
目下、アジア各国では大規模な工業団地が続々と誕生しており、こうした日本企業の海外移転の受け皿になろうとしている。そうしないことには、中国や韓国、台湾などの企業に対する競争力を維持できないのである。植松氏は、識者の主張を引用して「競争時代の企業組織には、CIOは、CEOとCFO(最高財務責任者)の3者で緊密に連携するトップ・マネジメント・チームを作り上げる必要がある」と訴えた。
そしてCIOこそが、イノベーションによって新しい価値を創造するための牽引役となるべきなのである。実際、米国IDGがCIO 90人を対象に行ったアンケート調査でも、ビジネス・イノベーションのアイデアを出すべき役職として実に80%がCIOと回答しているのだ。
「CIOが、これまでのような単にIT部門のトップという存在から大きく変化しようとしている。IT戦略が業務革新で重要であるというのは今や自明のこと。そうである以上、CIOがその推進役たるべきだという考え方は世界中でスタンダードになりつつある。もはやCIOは、ビジネスの戦略立案を含めたイノベーションの責任者であり、CIOの“I”は“Innovation”のIでもあるのだ」(植松氏)
イノベーションを企業の文化に
続いて植松氏は、国内流通最大手であるイオンの取り組みについて言及。イオンは、スケール・メリットとグループ・シナジーを事業の原動力としているが、こうした事業戦略を支えているのが全国に構築した独自の物流ネットワークである。目下、この物流ネットワークの整備に向けてCachéの導入が進められている。同社では、Cachéの導入によってTCOをCPUベースで30%減、ストレージベースでは実に70%減を目指しているという。
「イオンは、ITを駆使した物流機能の強化などによって、見事にグローバル・リテーラーとしての地位を確固たるものにした」(植松氏)
また、国内最大の医薬品卸会社メディセオでも、さらなる処理能力と生産性の向上、そしてコスト削減を図るべく、Cachéを導入している。Cachéの導入によって、月次処理時間が4分の1に、オンライン・レスポンスは16分の1に、そしてパッチ検索レスポンスは2分の1にすることができたという。さらに、開発にかかる時間とコストも大幅な削減を実現しているのである。
植松氏は、「これはまさに継続したイノベーションの成果だろう。一度改革したらそれで終わりではなく、すぐに次の改革に取り組むような企業文化がメディセオには根づいている」と高く評価した。
同氏はさらに、ITを活用した業務改革の好例として宮崎大学医学部附属病院での日本初となるAndroid対応電子カルテ・システムを紹介。ここでも、CIO的な立場の医師が成功の立役者となっていることを強調した。
最後に植松氏は、「企業資産とイノベーション、価値創造の3つが常に循環してまわっていくことで、これからの企業の競争力がつくられていくのではないか」と訴え、大きな拍手に包まれながら講演を終えた。![]()

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