──何ごともブレずにやり続ければ乗り越えられる
2012/01/162012年、新たな年はビジネスやITをどのような方向に導いていくのか。多くのビジネスパーソンは、心機一転したいという思いを抱いているだろう。そこで、日本一有名なテレビショッピングで通信販売業界を牽引する株式会社ジャパネットたかた 代表取締役の髙田明氏と、創立100周年を迎え、次の100年に向けて存在感をますます高めるIBMの日本法人、日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM) 取締役 副社長執行役員の下野雅承氏の対談から、2012年を飛躍の年とするためのヒントをいただくこととしよう。
下野:ジャパネットたかたさんは2011年に創立25周年を迎えたそうですが、その間に急成長を遂げられ、今では日本で最も元気な企業と言われるようになりました。経営トップとして企業を率いてこられたその四半世紀を振り返ってみていかがですか。

ジャパネットたかた 代表取締役
髙田 明氏(左)
日本アイ・ビー・エム 取締役 副社長執行役員
下野 雅承氏(右)
髙田:独立して25年、あっという間でした。25年の歳月は、これから10年を過ぎても同じだろうと思うんですけど、私が年齢を重ねているだけで、気持ちはまったく変わらないんです。「今を生きる」というスタイルで毎日一生懸命やっているだけで、元気がある企業と言っていただくこともありますが、実感としてはありません。やってきた結果として、積み上がっているだけだと思うのです。これが下降線になろうと、上向こうと、それも自分たちで一生懸命やっている結果ですから。
下野:25年の間には、経営環境も大きく変わってきていると思います。例えば、多様化、IT化、グローバル化などがよく挙げられますが。
髙田:世の中の変化はすごく感じます。特にITの進化ですね。それによって、商品サイクル、世の中の動きなど、すべて変わりました。ただ、やっていることは変わりません。これからも粛々と自分たちに与えられた課題に向かっていく。その向かっている先がお客様で、それだけは大事にしていきたいですね。お客様に向けて私達ができること、その追求が企業価値そのものになると思います。
下野:取引の形態も大きく変化し、例えば銀行の取引も、窓口からネットバンキングへと、夜中でも振り込みが出来るようになりました。御社もメディアミックスを展開されていますが、そうした潮流をどのように感じて来られたのでしょう。
髙田:そうですね、まず、「今を大事にする」ということに、1つ付け加えるなら、どれだけ「今に全力投球しているか」です。妥協しない。メディアミックスに関しても、決してそれを目指してきたわけじゃない。
ラジオから始めて、テレビ、チラシ、そしてインターネット。当初はインターネットでモノが売れるわけないだろうと思っていたんです。ただ、時代が求めているからやるぞと。最初に商品が売れたときは、びっくりしまして。なんでネットでモノが売れるんだと(笑)。ただ、どれもいい加減にやらない。私は、やるんだったら徹底してやります。
下野:そこのところは、絶妙の経営者的な感覚で、今日の最善を尽くしながら、明日のことを良いバランスで見てらっしゃるんでしょうね。今日ばかりを見ていたら、なかなか。
髙田:IBMさんは7~8年前にパソコン事業をレノボさんに移管しましたが、それは勝算があったということなんでしょうね。今になってみると、その決断は正しく、時代の先をいく判断だったと分かりますが、あの当時の決断ですから。
下野:PCビジネスはIBMにとって消費者の皆さんへの会社の顔であり、売上げの占める割合も高く、この事業を手放すのは断腸の思いでした。ただ、パソコン事業は差別化が非常に難しく、先見の明だったと思います。
下野:会社の経営手法についてお聞きしたいのですが、ジャパネットたかたさんでは、企業としてのプロセスにおいて、エンド・トゥー・エンドのほとんどを内製化されていますよね。例えば、コールセンターの運営、あるいは物流センターなどを専門に手がけている企業はたくさんありますから、アウトソーシングもできると思うんです。持つべきものは持つ、そうでないところは外に出して身軽になるという経営手法とは違う形を採用されているところは、非常に興味深いのですが。

「会社を方向転換させる良い時期だと思います」と創立26年目となる2012年の抱負を語る髙田氏。
髙田:お客様の満足度を追求し続けないと、企業は最終的に支持されないと思うんです。そのためには、やっぱり自前じゃないかと。
例えばコールセンターは、アウトソーシングすることもできます。しかし、そのオペレーターに商品を受注するスキルがあっても、商品を十分に理解しているわけではありません。商品を本当に理解せずに説明やサポートができるのだろうかと考えたら、難しいと判断しました。だから、自社の販売責任を達成するには自前が一番いいんだと。
アウトソーシングするというのは、アウトソーシングを受けていただく会社が、本当に一体となっていただけるのであるならば問題がないけど、そこまでをアウトソーシングの会社に求めるというのが難しい。逆にお聞きしたいのですが、アウトソーシングしたら安いとか、コアな部分をやりながらアウトソーシングするというのは、内容にもよると思いますが、どうなんですか。
下野:もちろん、業務によっては経験豊富なプロに任せたほうがいい場合もありますが、アウトソーシングすれば何でもかんでも安くできるわけではないです。
髙田:そうですよね。ただ、たとえコストが高くても、当社の夢を共有し、実現できるパートナーとなっていただけるのであれば、非常に助かるのです。我々は、販売に集中できますから。すべてを社内で抱える必要はないと思うんです。問題は、そこまでできる企業があるかどうか。 お客様の中に入り込んで一体になることで、売上げをシェアするというような仕組みのアウトソーシング。私達も、アウトソーシングするなら、このようなことを求めていこうと考えています。

「ジャパネットたかたをはじめとする元気な企業とともに2012年の日本を盛り上げたい」と語る下野氏。
下野:ITの世界では、昔と違って、大きなサーバから小さいサーバ、PC、あるいはタブレット端末まで、ハードウェアだけでもさまざまな環境がありますから、社内で対応できる人材をそろえるのが大変難しくなってきています。そういった意味でも、アウトソーシングが活用されるようになっています。
髙田:クラウドも注目されていますが、情報リスクが課題です。情報を預けるだけではなくて、最終的なセキュリティを任せるという観点で組めないと、ただクラウドで便利になりますというだけでは、難しいですね。
下野:もちろん、そこは私どもを始め、多くのITベンダーが最も注力しているところです。お客様に本当に「任せたい」と思っていただけるように努力しなければいけません。
さて、メディアミックスの話に戻りますが、ネット販売においてテレビやラジオと違う面はありますか。例えば購入後のフォローの仕組みなどは、テレビやラジオではできない仕組みです。
髙田:ネット販売もそうですが、自前のスタジオがありますから、そこで撮影している映像を週1回ほどインターネットで配信しています。動画配信はTwitterと連動させているので、非常に面白い反応があります。例えば、番組を見ていて聞きたいことがでてきたら、Twitterでつぶやいてもらえば、スタジオからリアルタイムで答えられます。また、Skypeを使ってお互いに顔を見ながらコミュニケーションするという仕組みも利用しています。インターネットでお客様とのコミュニケーションが大きく変化しました。
下野:現在では、TwitterやFacebookがお客様の声を聞く場所として注目されていて、そうした大量のデータを分析することにより、個人が何を考えているのかを把握できる仕組みが簡単に利用できるようになってきました。
髙田:そうした最新技術は、積極的に活用していきたいですね。
下野:最後に2012年の取り組みについて聞かせてください。
髙田:2011年というのは、地球全体で天変地異があり、欧州や米国の債務問題もありました。これから世界大恐慌がくるという話もありますが、私は2012年を信じたい。人間の英知がいい年にしてくれると信じています。どの企業も良いときもあれば、悪いときもあります。これは神のみぞ知ることで、我々はできることを一生懸命やるだけです。
ちょうど会社設立から25周年を経て、我々自身も変化しなければならないと考えていました。そういう意味では、2012年は大変な1年になると思いますが、逆にワクワクしている面もあります。会社を方向転換させる良い時期だと思いますから。何ごともブレずにやり続ければ、山あり谷ありでも乗り越えていけるでしょう。社員とともに走り続ける1年になると思っています。
下野:私は会社で時々「春待ち症候群」って言葉を使います。寒い冬のあとにいつかは春がくると思って、何もせずじっと黙っている人のことです。でも、最近、私は何もしなければ春はこないという気がするんです。やっぱり努力しないと勝機は見えてこない。
ジャパネットたかたさんは、佐世保という地で、これだけ日本全体で知名度の高いブランドを作り上げられた。「春待ち症候群」では成し得なかったと思います。よくあるじゃないですか、向かい風のときこそ、強い草が残って、弱い草がほろんでいく。日本を元気にするのは、そうした企業だと思います。日本IBMもITを通じて、またジャパネットたかたさんをはじめとする元気な企業とともに2012年の日本を盛り上げていきます。本日はありがとうございました。![]()
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