情報の戦略活用はデータの適切な維持と管理から始まる
2012/02/17企業競争力を高めるための一手として、情報活用力の向上があるのは言うまでもない。またそれゆえに、IT化で他を先行する企業の多くが、ビジネス・インリジェンス(BI)環境の強化や最近話題のビッグデータの活用に意欲的に取り組んでいる。ただし、BIやビッグデータ関連のツールを採用すれば、自動的に情報の活用力が高められるわけではない。その実現に向けては、ツールの導入以前に遂行すべき重要な取り組みがある。それはデータマネジメントだ。ここでは、この取り組みの重要性と必要性について改めて考察する。
大西浩史 日本データマネジメント・コンソーシアム 理事/運営委員長
『200歳の住民が生きている?!』――今から少し前、住民基本台帳システムにおける「ずさんなデータの管理」の問題がメディアを通じて明るみとなり、国民からの非難にさらされた。
この悪例を引くまでもなく、いくらお金をかけて良いシステムを作ったところで、そのシステムに登録され、更新されるデータが適切な状態で維持/管理されていなければ、その活用はままならない。しかも昨今では、我々の日常生活の隅々にまでITが浸透している。そのため、データの不適切な維持/管理が、ビジネスや社会に与える影響は以前にも増して大きくなっている。
言うまでもなく、世の中で利用されているデジタル・デバイス(PCやタブレット、スマート・フォン、携帯電話など)や紙メディアに対して、システムから出力される情報の元はすべて「データ」である。
また、企業の基幹システムであれ、営業マンが作るプレゼン資料であれ、消費者が日常的に使っているネット通販サイトであれ、企業と企業、企業と個人、あるいは個人と個人とを情報によって結ぼうとした場合、あらゆる場面で用いられるのはデータにほかならない。そうした中で、例えば、数万人の生活者が利用するeコマース・サイトにおいて、「100,000」円の商品の価格が1ケタ少ない「10,000」円として登録されたとすればどうだろうか。そして、その商品に対する注文が殺到したとすればどうなるだろうか。
おそらく、そのサイトの運営事業者は、金銭的な大きな損失を余議なくされるばかりか、周囲からの信頼の失墜や悪しき風評によるブランド・イメージの毀損など、計り知れないダメージを被ることになる。
現在、このようなトラブルは頻繁に発生している。ただし、その問題が「(ITの)システムが悪い」といったかたちで矮小化されることが少なくない。
「システムが悪い」という指摘は部分的には正しいと言えだろう。だが、そこには問題の本質に対する大きな誤解もある。改めて言えば、不適切なデータを生み出し、流通させてしまうのは、マネジメントの問題にほかならない。言い換えれば、不適切なデータの発生と流通を阻止するためには、ITシステムの不出来を解消しさえすればよいわけではなく、データの取り扱いに関する仕組み全体――すなわち、戦略や組織体制/役割分担、マインド/教育、ルール/プロセス、関連するシステム/ツールなどを包含した仕組み全体――に対して、改めて真剣に向き合う必要があるのである。
求められる組織横断のデータ活用
今日、日本や米国、および欧州の先進諸国は、総じて少子化によるマーケットの縮小に苦しめられている。それに対して新興諸国は、高度経済成長期の日本のように着実な成長を遂げている。そのため、日本の企業は現在、次なる成長/発展、あるいは生き残りをかけて、グローバルな市場(主として新興国の市場)に打って出る、あるいはグローバル市場での事業拡大を推し進める必要に迫られている。
ただし一方で、欧米のデフォルト危機や中国市場での需要の変動など、世界の経済情勢は目まぐるしく変化している。その変化に合わせて、自社のグローバル戦略/戦術をスピーディに見直していくためには、現場のビジネス状況をタイムリーに把握するための情報が必要とされる。
では、その“情報”とはどのようなものなのか。それは属人的にサマライズされた集計表レベルの情報ではなく、ビジネスの今を最も正確に表わすデータを源(ソース)としたものとなろう。
当然のことながら、グローバルに事業を展開する企業の場合、国内外の各部門/事業所のシステムに日々新たなデータが格納されていく。となれば、それらのデータについて、その値の意味や粒度、さらには横串で分析するための軸を(組織横断的に)そろえて、商品別の原価や在庫、顧客の購買傾向などに関する情報を集め、変化の予兆をいち早く察知し、迅速な意思決定を行いたい、と経営陣が考えるのは自然の成り行きと言える。
また昨今では、M&Aによる事業統合が、市場で勝ち残るための当たり前の手段として、あるいはビジネスのグローバル展開のスピードを増すための手段として活発に用いられている。そうした流れも、組織横断的に必要なデータを収集/分析し、戦略上の意思決定に生かしていきたいという要求につながっている。
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