リスクを取る価値があるのかを判断すべき
2011/03/11タブレット端末やスマートフォンなどのモバイルデバイスが普及したことにより、それらを社内で使うBYOT(Bring Your Own Technology)の話題が、米国のCIOの耳に多く飛び込んでくるようになった。彼らの大半はセキュリティの観点から否定的な立場だ。しかし、景気の回復局面ではBYOTの容認が、企業としての競争力を高めるのかもしれない。
クリステン・ラモロー ● text by Kristen Lamoreaux
BYOT(Bring Your Own Technology)はCIOやCSOを震え上げさせるものだ。彼らのBYOTに対する意見は2つに分かれている ―― 都市伝説だというものと、未来の波だというものだ。いずれにせよ、これまで意見を聞いてきたCIO達は異口同音に、「BYOTは採用面接で必ず就職希望者から尋ねられるようなものではない」と言っている。確かにCEOや営業部門の中には、自分のタブレット端末を社内ネットワークにつなげたいと考える者もいるが、BYOTを求める声はまだごく一部だ。
MobilexUSAのテクノロジー担当バイスプレジデントのデイブ・ケルブルは、BYOTに取り組んで来た。「買収後の統合で入社した人々の中には、業務目的で自分のコンピュータを利用している者がいる。セキュリティやサポートの観点から、自前のコンピュータ利用をやめさせる方法を模索中だ」と、CSOでもあるケイブル氏は語る。
MobilexUSAはベッドサイド診断システムの最大手だ。従業員数は現在3,000名。ケルブル氏は、2011年末までに合併や本業での成長で従業員数は5,000名に達するだろうと予測する。規模の拡大は、従業員のニーズが多様化することになる。ケルブル氏はBYOTについて、新規採用候補からは特に何も質問されないというが、現場の管理者や営業担当、IT担当など、既存の従業員からは問い合わせがあるという。
「BYOTを回避しつつ、従業員が効果的にまたセキュアに仕事ができるようにするためにはどうすればよいのか、苦慮しているところだ」とケイブル氏は告白する。
メアリ・ソビエコウスキ氏は、国際的なヘルスケア関連コンサルタントおよび市場調査会社であるカンターヘルスのCIOだ。ソビエコウスキ氏が記憶するかぎり、BYOTを強く要求してきたのは、ある一人の新入社員だけだ。コンプライアンス上の理由からカンターヘルスはBYOTを認めなかったが、従業員のニーズを考慮し、新たなマシンを提供した。
最新機器を求める一人の従業員の声は、「その従業員の声であり、会社の声でもある」とソビエコウスキ氏は考える。しかし、データセキュリティの低下、ウイルスやスパイウェア等の脅威、さらにSOX法へのコンプライアンス等を考慮すると「防御に回るしかなかった」わけだ。
カンターヘルスは来年、従業員数が5%増加すると予想している。その中でソビエコウスキ氏は、防御を確保しつつ、会社が最高の人材を惹き付け、維持できるようにしていかなければならない。広告代理店でのCIO経験があることから、従業員の創造性や生産性を抑制しないことの重要性を十分認識しているソビエコウスキ氏は、「テクノロジーのリーダーになり、従業員にソルーションを提供する」ことを信条としている。
世界各国で保険・再保険サービスを提供するXL Groupのニール・ブランドメイアー氏は、採用面接でBYOTの質問が出たことはないと語る。しかし、事業規模60億ドルのXL GroupはBYOTに先進的だと、ブランドメイアー氏は誇らしげだ。BYOTに対し前向きに取り組むことで雇用主としての差別化を図り、モビリティを高め、最終的にはハードウェアやサポートコストの削減を実現し、その一方でブランド力も向上したいというのがXL Groupのねらいである。
XL GroupがBYOTプログラムで注力しているのは、スマートフォン対応と、どのようなデバイスからもウェブ経由で社内メールシステムにアクセスできるようにする仕組みだ。ブランドメイヤー氏は、2011年中に外部のPCからも社内ネットワークへのアクセスが可能になるだろうと考えている。「モバイルデバイスのBYOTを実現することで、理論的には、全従業員がメールへのリモートアクセスができるようになる。現在リモートアクセスが可能なのは、全従業員の33%にとどまっている。そして最終的にはビジネスアプリケーションへのアクセスも可能になるだろう」とブランドメイヤー氏は予想する。
従業員の自前のデバイスに対応するためには、現行のセキュリティポリシーの拡張や知的財産の増大、外部サポートサービスの追加購入なども必要となる。
XL Groupは、法規制へのコンプライアンスにも経験が深い。ブランドメイヤー氏は、「良いテクノロジーとポリシーに沿った正しい行動を従業員がすると、信頼するかどうかの問題だ」と述べる。
景気の回復に伴い、BYOTに対応している組織は競争力を得るのだろうか ―― 得るかもしれない。では優秀な人材が、自分の使いたいタブレット端末を持ち込めないという理由で、内定を拒絶するだろうか ―― その可能性は低い。BYOTは状況に照らし合わせて考慮し、リスクを取る価値があるのか判断すべきだろう。![]()
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