明快な数的指標を活用せよ
2012/02/01メジャーリーグの監督は、各選手の健康状態とパフォーマンスを正しく把握しなければ、チーム全体のパフォーマンスを最適化できないことを知っている。アプリケーションの状態と、従業員がそのアプリケーションをどう使うかについても、同じことが言える。選手、コーチ、監督として輝かしい実績を挙げ、米国野球殿堂入りを果たしたヨギ・ベラ氏が言うように、「見ることで多くのことを観察できる」のだ。
ロリ・ウィズド ● text by Lori Wizdo
IT部門が野球から学べること
メジャーリーグ・ベースボール(MLB)の熱狂的なファンでなくても、米国人なら地元チームの順位くらいは知っている。ましてや地元チームのユニフォームを持っているファンとなると、チームの主砲のホームラン数とピッチャー陣の防御率もすらすらと口に出せるのではないか。
野球というスポーツにはKPI(重要業績評価指標)のメトリックが数多くある。なかには1世紀をさかのぼる統計もあり、1940年代にMLB入りしてヨギ語録と呼ばれる数々の“迷言”を残した伝説的なキャッチャー、ヨギ・ベラ氏の「破られるまで記録は残り続けると知っていた」という言葉は今でもよく引き合いに出される。
IT部門はメジャーリーグから貴重な教訓を学ぶことができる。IT部門も“アプリケーション・マネジメントのボックス・スコア(成績表)”を作るべきではないか。重要なトランザクションやプロセスすべてに対し、「AVR」(平均応答時間)、「AAR」(総採用率)、「RTQA」(ランタイム品質平均)を報告できるようにするのだ。
こうした明快で議論の余地がないメトリックは、基幹系ビジネス・アプリケーションのサービス・レベルに、ITとビジネスの連携に欠かせない“共通の言語”を提供してくれる。もちろん、ITマネジメント・ツールに毎年約260億ドルが投じられているのは、まさにこの目標を達成するためである。
だが、ビジネス部門の一般関係者にIT部門のサービス・レベルは年々向上しているかと尋ねても、笑顔でうなずく人は決して多くないはずだ。ITエグゼクティブは、予算の使い方についてヨギ・ベラ氏の知恵から多くのものを盗んでほしい。
理論と現実の違い
ベラ氏はかつて、「理論的には理論と現実の間に違いはないが、現実にはある」と語ったとされる。この言葉には、ITエグゼクティブが心にとどめておくべきメッセージが含まれている。今日IT部門に広く採用されているアプリケーション・マネジメント・ツールの中には、現実のシミュレーションに基づくものや、現実のメトリックの代用物に依存するものがあまりに多い。
例えば、今なお最も多く使われている第1世代のアプリケーション・パフォーマンス・モニタリング・ツールを考えてほしい。第1世代のツールは、バックエンド・インフラの階層それぞれで、そのアプリケーションによって使われるリソースと処理時間を測定する。理論的には、アプリケーションの実行がデータベース・サーバやネットワーク・サーバ、アプリケーション・サーバ(例えばIBMの「CICS」「J2EE」「.NET」など)にリソースの制約を生じさせなければ、そのアプリケーションは快適に動作していることになる。
現実にこのモニタリング方法を採用すれば、バックエンドで「すべてのシステムが正常」であるにもかかわらず、ビジネス部門からアプリケーションが遅い、あるいはまったく応答しないといった苦情が来るかもしれない。このような場合、エンドユーザーの体感する問題を解決するにはどうすればよいのだろうか。
ユーザーが実際に基幹系ビジネス・アプリケーションをどう体感するか分からないことから、第1世代のエンドユーザー・エクスペリエンス・モニタリング・ツールは“偽り”のトランザクション・エンジンとなった。これらのツールは、銀行の支店や遠隔地の生産拠点といったエンドユーザー環境のデスクトップでアプリケーションを実行するのに、トランザクション・スクリプト(エンドユーザーが理論上どのようにしてトランザクションを実行するかを記述したもの)を使う。
シミュレートしたトランザクションで測定された応答時間を、エンドユーザー・エクスペリエンスの代わりとして用いているわけだ。これは理論的にはよいアイデアかもしれないが、実際のエンドユーザーはスクリプトとして記述できないさまざまな行動を示すことから、シミュレートしたトランザクションとは大きく異なることが多い。
これら両方の問題を考えると、実際のアプリケーションを使い、実際のトランザクションを実行することで、実際のエンドユーザーが体感するアプリケーション・パフォーマンスを測定するほうが合理的だと言えよう。大手調査会社が、「ほとんどのグローバル2000企業は購入の決定に際して、エンドユーザー・エクスペリエンス・モニタリングを最も重視している」と指摘したのも、これが1つの理由だ。
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