危機に際して“情報に対する人々の意識”を一手に引き受けるのがCIO
2011/04/07CIOには、「急激な変化の時代において、幹部が危機を乗り切り、意思決定を行うために必要なシステムとデータを特定する」という独自の責任が課されている。
キム S. ナッシュ ● text by Kim S. Nash
危機的状況において情報を戦略的に活用できるよう企業を導くCIOの特別な役割について、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院で経営およびエンジニアリング・システムを担当するマイケル・クスマノ教授に話を聞いた。
――新著の『Staying Power: Six Enduring Principles for Managing Strategy and Innovation in an Uncertain World(踏みとどまる力:不確実な世界における経営戦略とイノベーションのための6つの不変の原則)』では、激動の時代における経営戦略について考察されています。危機的状況に対処するうえで、CIOは特に何を重視すべきなのでしょうか。
危機には、製品、経済、政治に関するものなどさまざまな種類がありますが、すべての危機に共通して重要となるのは、「幹部がいかに必要な情報を入手できるか」ということです。
例えば、トヨタ自動車のリコール問題では、1990年代半ば頃からすでに品質に関する苦情が寄せられていたことは今となっては周知の事実です。北米でトラックのフレーム腐食の問題が報告され、欧州ではペダルの不具合が指摘され、そして米国と日本ではブレーキ・ソフトウェアの問題が持ち上がっていました。けれども、そうした情報を統合・分析して上級幹部に提示するといったことが一切なされなかったのです。
CIOには、現場やニュース・メディアの情報を集約するためのITシステムを整備することはできます。ですが、これはテクノロジーだけの問題ではありません。人々に、そうした情報に反応してもらうことが必要なのです。またそうした情報は、企業の上級幹部が定期的なおかつすぐに確認できる形にしておかなければなりません。
CIOの役割はITシステムを整備すればそれで終わりというわけではありません。情報を活用するためのプロセスも確実に整備する必要があります。
金融市場全体が高いリスクにさらされていたことを示す形跡もたくさんあります。CIOには、CIOだからこそ把握できるデータやシステムがあるため、CIOはCEOや同僚幹部に特別なアドバイスを与えられるユニークな立場にあると言えます。経営者らの判断はリスク要素を無視するものでした。CIOは情報収集を確実にすることはできますが、重要なのは、人々がそうした情報をどう活用するかです。
――CIOがここ最近でビジネス・リスクについて学んだことは何でしょうか。
リスクに対する責任や、事象を解析する責任、集めているデータの意味を理解する責任からCIOが解放されることなどないということです。これらは、会社のプロセスや業界のプロセスについての深い知識を持った人たちと上級幹部とが共同で取り組むべき事柄なのです。
CIOは部門間の枠を超えた非常に重要な立場にいるのですから、おそらくCIOは「情報に対する人々の意識」に関して、もっと多くの役割を担うべきなのでしょう。現代の組織が実行できることのほとんどは、ITが可能にしています。そのため、CIOには特別なプレッシャーがかかっているのです。
――危機が発生した場合、社内の情報はどう扱うべきでしょうか。
行動を起こせる人物を集める必要があります。実際に顔を合わせるのであれ、バーチャルなものであれ、頻繁に会議を行うことも重要です。
会議にはCIO、CTO(最高技術責任者)、ソフトウェア開発責任者らが参加して、ITで何ができるかを検討するほか、「幹部が情報をどうとらえているのか」「幹部はどのような情報を欲しがっているのか」といったことを常に把握しておく必要があります。有能なCIOは、「情報は人々が活用してこそ意味がある」という原則に基づいて行動するものです。それが現代のCIOの行動の基盤です。
――なぜ、会議は大切なのでしょうか。
メールを300人に送るだけでは、何も実行したことにはなりません。そのメールは気にとどめてもらえないでしょう。「これはしたのか? それはするつもりなのか? これについてはどう思うのか?」などと面と向かって直接相手に尋ねることに代わる方法などないのです。
会議は短いものでかまいません。我々がアジャイル開発から学んだことの1つに、「毎日会議を開くことは生産性の向上につながる」というものがあります。立ったままの会議でいいのです。くつろぐ必要はありません。みなに対して、自分のその日の予定を伝えるだけでかまいません。自分がしていることをほかの人たちがしていることと同期させるのです。そして、皆が実際的にリアルタイムで相互に対応し合えるよう促すことが重要です。
――そうしたアプローチは、日常の業務でも役立ちそうですね。
そのとおりです。変化のペースは業種によってさまざまです。変化のペースが速く、顧客や競合各社の動きも速い業界や、リスクの高い業界であれば、次々とわき起こる緊急事態に人々が迅速に対応できるよう、情報共有の仕組みを確実に構築しておく必要があります。![]()
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