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モバイル&ワイヤレス

企業の“消費者ガジェット無益神話”を打ち崩せ

最新アップル機器の利用はむしろ有益

2011/04/22

アップルのガジェットは果たして企業で役に立つのか――米国のリハブケアは、そうした懐疑的な見方に異議を唱える。リハビリ・サービスを提供する同社は、iPhone、iPad、iPod touchを導入し、カスタムiOSアプリを活用して、患者ケアの改善や競争力の強化を進めている。

トム・カネシゲ ● text by Tom Kaneshige

コンシューマ・デバイスが企業の全ビジネスをサポート

 リハビリ・サービス企業である米国リハブケアのCIO、ディック・エスキュー氏は、2年前にアップルのモバイル・デバイスをビジネスに活用する取り組みに乗り出した。現在、約8,000台の「iPod touch」、約700台の「iPhone」、約120台の「iPad」用に2つの基幹iOSアプリケーションを開発中だ。これらに既製のものを加えた3つのiOSアプリは、患者ケアの改善から新規ビジネスの獲得まで、同社のビジネスのあらゆる側面にかかわっている。

 リハブケアはニューヨーク証券取引所に上場しており、1万9,000人の社員を擁し、全米で35の救急病院とリハビリ施設を運営するとともに、医療機関向けにリハビリ・サービスを提供している。同社は厳しいSOX法(米国企業改革法)とHIPAA法(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)の両方に対応しなければならない。

 だが、そもそもアップルのモバイル・プラットフォームは、本格的なビジネス利用に本当に耐えるものなのか。「IT担当者の間では、こうしたアップル・デバイスは企業では役に立たないという神話が根強い」とエスキュー氏は語り、しかし「我々は、アップル・デバイスでクラウドを利用し、コンシューマー技術を生かすことで、多くの成果をあげている」と付け加えた。

なぜCIOはアップルの技術を試すべきなのか

 一部の企業IT部門は、アップルのコンシューマー製品が企業に入り込むことを嘆き、その勢いに歯止めをかけようと対策を講じているが、徒労に終わっている。だが、リハブケアのケースは、一部の企業では(厳しい規制を受ける企業も含めて)、流行の最新コンシューマー・デバイスやアプリが、有力なツールになることを証明している。

 エスキュー氏は、IT部門はここへ来て初めてビジネス陣営と柔軟に連携してプロジェクトを進めることができており、不協和音はないと語る。同氏のチームはモバイル・アプリを迅速に作成し、会社支給のアップル・デバイスを私用にも使うことを社員に認めている。

 リハビリ療法士は、iPod touchで仕事に役立つアプリを利用しており、ビジネス・スタッフはiPhoneやiPadを使って競合他社よりいち早く照会に対応している。経営陣は、iPhoneやiPadでシトリックスのアプリを立ち上げて社内サーバにアクセスしている。

 エスキュー氏は、社員に技術の利用を強いる必要がなくなった。以前は、お仕着せの技術を社員がなかなか受け入れず、チェンジ・マネジメントに苦労することが多かった。これに対し、社員はアップル・ベースの技術を喜々として使う。

 「社員はこれらのデバイスを気に入っている。ユーザーはこうしたコンシューマー技術であれば、すぐに受け入れるのだ」(エスキュー氏)

 コンシューマー技術をサポートすることで、CIOはIT部門のネガティブなイメージを転換できると同氏は語る。

 「我々は早い段階で、こうした技術に関して、あれもダメ、これもダメと禁止ばかりするIT部門にはならないようにしようと決めた。アップル・デバイスを活用するプロジェクトを進めながら、こうした技術をどう取り入れていくべきかを見いだしていく」(エスキュー氏)

iPhoneとiPadのアプリがビジネスで活躍

 ほんの数年前には、病院を訪問して患者の事前スクリーニングを行い、適切なサービスを提案するリハブケアのスタッフは、7種類の紙の書類に記入し、さまざまな関係者にファクスで送付する作業に平均5時間をかけていた。そうした中でリハブケアとライバル会社は、患者に最適なサービスを真っ先に提案しようとしのぎを削っていた。

 エスキュー氏は、リハブケアのスタッフがiPhoneを持ち歩いていたことから、「iPhoneアプリを導入すれば、ペーパーワークをする代わりに電子データの収集および処理を行えば済むのではないか」と考えた。そうなれば、リハブケアはライバル会社に対して提案のスピードで優位に立つことになる。

 リハブケアの社内開発者は、セールスフォース・ドットコムのクラウド型プラットフォーム「Force.com」を使って、わずか4日間でWebアプリを構築した。このWebアプリにより、照会への対応に要する時間が1時間以内に短縮された。

 「我々は、手作業のプロセスを自動化するアプリを作成した。このアプリは、機会損失の削減に大きく貢献している」(エスキュー氏)

 iPadが登場すると、一部のスタッフは、その大きな画面を生かしてもっと楽にデータを入力したいと考えた。このアプリはWebベースであるため、リハブケアのiPadユーザーは、Safariブラウザから呼び出すだけで利用できた。

iPod touchは私用も可

 また、リハブケアは、リハビリ・サービスに当たる約8,000人の療法士にiPod touchを配備し、「Smart Mobile」という新しいアプリを利用できるようにしている。このアプリは、業務スケジュールを確認したり、ツールを使って勤務時間の記録や、患者治療についてメモを取ったりすることができる。

 Webベースの照会対応アプリよりも複雑なSmart Mobileは、ヘルスケア業界向けソフトウェア・ベンダーのカサンバが開発したネイティブiOSアプリだ。Smart Mobileは、iPod touch上でローカルに動作するため、療法士はインターネットに接続しなくてもデータを入力できる。インターネットに接続すると、Smart Mobileからリハブケアの請求、給与、臨床ドキュメントの各管理システムに、データが自動的に送信されるようになっている。

 Smart Mobileのユーザー・インタフェースは、iPod touchに合わせて調整されており、キー操作を最小限に抑えるドロップダウン・メニューやワンクリック選択が利用されている。また、ネイティブ・アプリでは、Webアプリとは異なり、デバイス固有の機能も使われる。Smart Mobileでも、iPod touchのタイマー機能が利用されている。

 療法士は、iPod touchを私用にも使うことを奨励されている。彼らが自分のデバイスとして大事に扱えば、故障交換の費用を抑えられるだろうという考え方からだ。

 その背景には、「Palm Pilot」での教訓がある。リハブケアは2000年に、勤務時間と患者治療の記録を行うためのデバイスとして、数千台のPalm Pilotを療法士に配備した。それらを私用に使うことは禁止されていた。「毎週、平均200~300台ものPalmが故障で返却されてきた」とエスキュー氏は振り返る。「これに対し、我々は2010年4月から、治療現場で使えるように8,000台のiPod touchを配布しているが、我々が受け取った故障品はたった6台だ」(エスキュー氏)だという。

アップルへの依存と信頼

 リハブケアでは現在、Smart Mobileに似たアプリを自社の別の療法士グループ向けに開発している。この療法士グループは、ドキュメント管理と医療費管理にかかわる固有の規制に従わなければならない。では、アップル・デバイスとiOSアプリにおけるセキュリティとコンプライアンスの問題に、リハブケアはどう対処しているのか。

 「我々は何事に関しても、社内外の専門組織による法務やコンプライアンスの観点からのレビューを受けている。すべてにわたって彼らのお墨付きを得ているので安心だ」とエスキュー氏は述べた。

 照会対応のためのWebアプリも刷新が進められており、新版は「One Referral」という名前になっている。この刷新では、Smart Mobileのリハブケア版の開発と同様に、Webアプリとネイティブ・アプリのハイブリッド・アプローチが採用されている。具体的には、One Referralは、iPhoneやiPadに最適化されたネイティブ・インタフェースを持つiOSアプリに生まれ変わるが、従来のようにAPI経由でForce.comに接続する。

 エスキュー氏は、このアプリはAndroidデバイスなど他のモバイル・プラットフォームに簡単に移植できると明言している。しかし、リハブケアが、社員が毎日使うアプリでiOSのネイティブ・インタフェースを提供する方針を打ち出していることは、アップルに対するリハブケアの依存と信頼が高まっていることを示している。

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